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金沢大学ナノ生命科学研究所(WPI-NanoLSI)のアシフ・イクバル特任助教、秋根茂久教授、自然科学研究機構分子科学研究所/総合研究大学院大学の江原正博教授の共同研究グループは、イオンとの結合に応答して分子の右巻き・左巻きが切り替わる「キラリティー反転」(※1)の仕組みを、ゆっくりと構造が変わる独自開発の閉じたカゴ構造を持つ分子を用いて解明することに成功しました。
分子機械や情報記録材料などの次世代ナノデバイスでは、外部からのインプット(スイッチの切り替え)に応答して構造が変わる分子が重要な役割を担います。
しかし、インプット後に構造が変化するまでの過程は一般的に非常に速く進行するため、その詳細な仕組みは十分に分かっていませんでした。
そこで本研究グループは、ゆっくりとスイッチを切り替えられるような閉じたカゴ型錯体を開発しました。
この分子では、インプットとして金属イオンを使った場合、カゴの入り口が閉じているので、イオンはカゴ型構造の内部にゆっくりと入っていきます。
その後、構造変化(右巻き・左巻きの変化)がゆっくりと起こるため、その一連の過程を詳細に解析することに成功しました。
本研究は、分子の応答速度そのものを設計できることを示した成果であり、将来的には分子機械、情報記録材料、刺激応答性センサーなどへの応用が期待されます。
本研究成果は、2026年6月29日(アメリカ東部時間)にアメリカ化学会誌『Journal of the American Chemical Society』のオンライン版に掲載されました。
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図1:一般的なゲスト結合を「インプット」とした右巻き(P体)・左巻き(M体)の反転。ゲスト分子やイオンが速やかに結合し、それと同時に瞬時に左右反転が起こっているように観測される。途中の過程を明らかにするのは困難であり、あまり解明されてこなかった。

図2:「閉じた」カゴ構造を持つらせん型分子の構造。セシウムイオン(Cs+)が内部にゆっくりと取り込まれ、それに伴って右巻き・左巻きの比率が変化する。

図3:「閉じた」カゴ構造を持つらせん型分子の右巻き(P体)・左巻き(M体)の比率が、ゲストの取り込みに伴って変化する様子。閉じたカゴ型構造のため、「インプット」として用いるゲストの結合はゆっくりと起こる。またP体/M体の入れ替えもゆっくりと起こる。したがって、変換途中の過程を解析すれば経路A、Bのどちらで起こっているかを区別できる。今回の閉じたカゴ構造を持つらせん型分子では、最初の存在量が少ないM体がゲストを取り込むAの機構であることが、速度論解析により明らかとなった。
【用語解説】
※1 キラリティー反転
鏡像の関係にあって互いに重ね合わせることのできない分子をキラルな分子と呼ぶ。これらのキラルな分子には、右手型と左手型の区別が生じる。一般的には、右手型・左手型の間の変換は起こらないが、らせん構造を持つ分子の右巻き・左巻きなどのように外部刺激などによって相互に変換できる場合があり、それをキラリティー反転と呼ぶ。
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ジャーナル名:Journal of the American Chemical Society
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