金沢大学理工研究域先端宇宙理工学研究センターの上田周太朗特任准教授らの研究チームは、日本が主導して開発したX線天文衛星XRISM(クリズム)(※)を用いて、宇宙最大・最重量の天体である銀河団の一つを対象に、その中心にある超巨大質量ブラックホールと周辺の高温ガスの運動の精密な測定に成功しました。
その結果、ブラックホールから爆風のように高速で噴き出す高温ガスが、自身の銀河(半径約3万光年)を大きく超え、約30万光年先にまで広がるガスを激しくかき乱していることを発見しました。その威力は従来の推定の100倍以上に達し、これまで銀河の内部に限られると考えられていたブラックホールの風の影響が、銀河の外側の広い領域にまで及ぶことを世界で初めて明らかにしました。
本研究は、銀河団とブラックホールの研究者が連携し、XRISM衛星の開発に深く携わってきた研究者らの知見を活かして独自の解析方法を確立したことで実現しました。上田特任准教授は、「XRISMによるこれまでの銀河団の観測から、ブラックホールの風の影響は限定的で、高温ガスは静々と運動しているという描像が確立しつつありましたが、本成果は予想外の結果をもたらしました。なぜこの銀河団だけ爆風が吹いたのか、どのように高温ガスが爆風で激しくかき乱されたのかという問いに迫ることは、新発見で天文学をリードしてきたXRISMの次なる課題の一つと言えます」と話します。今後はXRISMや次世代の天文衛星などにより、ブラックホールが周囲の環境に及ぼす影響がさらに明らかになっていくと期待されます。
本研究成果は、2026年7月28日午前10時00分(英国時間)、科学誌『Nature Astronomy』に掲載されました。

図:宇宙における銀河団(銀河の集団)から単一の銀河、その中心に存在す る超巨大ブラックホールへと至る階層構造の模式図。ブラックホールは銀河の 半径に比べて約1億倍以上も小さいが、銀河の中心で重要な役割を担っている。 (クレジット:東北大学)
【用語解説】
※ XRISM(クリズム)
X線分光撮像衛星XRISM(クリズム、X-Ray Imaging and Spectroscopy Mission)は、2023年に鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられたX線天文台。JAXAが主導し、米国航空宇宙局(NASA)、欧州宇宙機関(ESA)と進めている国際共同プロジェクトで、星や銀河、そしてその間を吹き渡る高温ガス(プラズマ)を観測し、それらが作る宇宙の大規模構造の成り立ちや、天体間を行き交う元素とエネルギーの流れなどを、これまでにない詳しさで明らかにすることを目的としている。
ジャーナル名:Nature Astronomy
研究者情報:上田 周太朗
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