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金沢大学医薬保健研究域薬学系の平野圭一教授、松本晃助教、王超准教授、大学院医薬保健学総合研究科創薬科学専攻博士前期課程2 年の新井勇人、医薬保健学域薬学類5年の小倉駿佑、大学院医薬保健学総合研究科創薬科学専攻博士前期課程1 年の鎌崎翔太の研究グループは、可視光を照射することで駆動する独自の触媒系を利用し、α-シリルアルコール(※1)が持つ弱い炭素–ケイ素結合を残したまま、強固な炭素–水素結合を選択的に切断する分子変換技術を開発しました(図1)。
α-シリルアルコールは、炭素アニオン(※2)や炭素ラジカル(※3)といった活性種の前駆体として機能することから、医薬品の精密化学合成に利用される有機ケイ素化合物(※4)の重要な原料です。また近年では、有機ケイ素化合物そのものを医薬品へ応用する研究も進んでいます。しかし、その合成には多段階の反応を要し、官能基許容性(※5)にも乏しいことから、より簡便で汎用性の高い合成法の開発が求められてきました。
本研究では、通常は化学反応で優先的に切断されやすいα-シリルアルコールの炭素–ケイ素結合を残しつつ、より強固な炭素–水素結合だけを選択的に切断し、続く官能基導入へつなげることで、入手容易な単純構造のα-シリルアルコールを、より複雑で高機能な分子骨格へと「アップグレード」させることに成功しました。本技術は、「弱い結合を切る」という従来の分子変換の発想を覆す成果であり、有機ケイ素化合物の効率的な合成と活用の幅を大きく広げる新たな手法として、創薬や機能性材料開発への応用が期待されます。
本研究成果は,2026年7月2日8時(米国東部標準時)に米国化学会誌『ACS Catalysis』のオンライン版に掲載されました。

図1:研究概要
【用語解説】
※1 α-シリルアルコール
同一炭素原子上にケイ素置換基およびヒドロキシル基を有する化合物。
※2 炭素アニオン
炭素原子上に負電荷を持つ化学種の総称。
※3 炭素ラジカル
炭素原子上に不対電子(ペアを組んでいない電子)を持つ化学種の総称。
※4 有機ケイ素化合物
分子内に炭素–ケイ素結合を含む有機化合物の総称。
※5 官能基許容性
化学反応によって目的の変換を進行させる際、分子内に存在する他の官能基が影響を受けずに耐えられるかの度合いを指す。有機合成反応を評価する重要な指標の一つ。
ジャーナル名:ACS Catalysis
関連情報
金沢大学 医薬保健学域 薬学類/大学院医薬保健学総合研究科 薬学専攻・創薬科学専攻