金沢大学医薬保健研究域医学系の小野賢二郎教授、篠原もえ子准教授は、九州大学大学院医学研究院衛生・公衆衛生学分野の二宮利治教授、熊本将也学術研究員ら、理化学研究所生命医科学研究センターの桃沢幸秀副センター長、および弘前大学、岩手医科学、慶應義塾大学、松江医療センター、愛媛大学、熊本大学、東北大学加齢医学研究所の研究者からなる研究グループと共同で、大規模認知症コホート研究(※1)である JPSC-AD 研究に参加した 65 歳以上の地域住民 9,605 名を対象に、APOE ε4 遺伝子型(※2)別に修正可能な危険因子と認知症、脳画像所見との関連を解析しました。
解析の結果、APOE ε4 遺伝子型非保因者およびヘテロ接合性保因者(※3)では、修正可能な危険因子の集積が少ないほど認知症の有病率が低かった一方、APOE ε4 ホモ接合性保因者(※3)では、修正可能な危険因子の集積の程度による認知症リスクの明らかな差は認められませんでした。
本研究の成果は、APOE ε4 ヘテロ接合性保因者など一定の遺伝的リスクを有する人においても、生活習慣病などの修正可能な危険因子の管理が、認知症のリスク低減に寄与する可能性を示すものです。
本研究成果は、2026 年 5 月 22 日に国際学術誌『Alzheimer’s & Dementia: Diagnosis, Assessment& Disease Monitoring』に掲載されました。

【参考図】
【用語解説】
※1 健康長寿社会の実現を目指した⼤規模認知症コホート研究(Japan Prospective Studies Collaboration for Aging and Dementia(JPSC-AD))
我が国の 8 地域(⻘森県弘前市、岩⼿県⽮⼱町、⽯川県七尾市中島町、東京都荒川区、島根県海⼠町、愛媛県伊予市中⼭町、福岡県久⼭町、熊本県荒尾市)における地域⾼齢住⺠約1万⼈を対象とした⼤規模認知症コホート研究である(https://www.eph.med.kyushu-u.ac.jp/jpsc/)。ベースライン調査は 2016 年−2018 年に実施され、予め 8 地域で標準化された研究計画に基づいて、詳細な臨床情報(認知機能を含む)、頭部 MRI 画像データ、遺伝⼦情報を収集している。さらに、認知症や⼼⾎管病の発症や死亡に関する追跡調査を継続している。なお、本研究は、国⽴研究開発法⼈⽇本医療研究開発機構(AMED)認知症研究開発事業の研究助成⾦を受けている。また、サントリーホールディングス株式会社との共同研究も実施している。
※2 APOE ε4 遺伝⼦型
APOE 遺伝⼦は脂質代謝などに関わる遺伝⼦で、ε2、ε3、ε4 などの型があります。このうち APOE ε4 は、アルツハイマー型認知症の代表的な遺伝的リスク因⼦として知られています。
※3 ヘテロ接合性保因者/ホモ接合性保因者
ヒトは通常、遺伝⼦を⽗⺟から 1 コピーずつ、計 2 コピー持っている。ある遺伝⼦型を 1 コピー(⽚⽅)持つ⼈をヘテロ接合性保因者、2 コピー(両⽅)持つ⼈をホモ接合性保因者と呼ぶ。
ジャーナル名:Alzheimer’s & Dementia: Diagnosis, Assessment& Disease Monitoring
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