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金沢大学医薬保健研究域薬学系の西谷直也助教、金田勝幸教授らの研究グループは、特定の行動に対する動機づけをもたらす神経基盤の解明に成功しました。
報酬を求める「動機づけ」は生物に共通する行動原理ですが、過剰な動機づけは依存症につながります。近年、インターネットやゲームなど特定の行動に対する過剰な動機づけによる行動嗜癖(※1)が社会的問題となっていますが、動物実験モデルの構築が難しく、神経メカニズムの解明は進んでいませんでした。
本研究では、マウスにとって報酬として知られるホイールランニング(輪回し行動)を利用したオペラント課題(※2)を確立し、これを用いて報酬情報処理において中心的な役割を担う内側側坐核(medial nucleus accumbens, mNAc)(※3)のドーパミン(※4)神経伝達に着目した解析を行いました。その結果、mNAc でのドーパミン D1 および D2受容体を介した神経伝達が動機づけに重要であることが明らかになりました(図 1)。また、マウスがこの課題を実施している最中の mNAc の神経活動と、ドーパミン放出量の変化を観察し、mNAc でのドーパミン遊離と D1 受容体の活性化による神経活動の変化が、ホイールランニングに対する動機づけの神経基盤として重要である可能性が示されました(図 2)。これらの知見は将来、行動嗜癖の病態理解や治療薬の開発につながることが期待されます。
本研究成果は、2025 年 6 月 12 日午前 2 時(中央ヨーロッパ時間)に米国科学誌『Neuropsychopharmacology』のオンライン版に掲載されました。

図1:オペラントホイールランニング課題において、mNAc 内 D1 受容体阻害薬投与は報酬欲求と報酬消費を減少させた(下段左)。mNAc 内 D2 受容体阻害薬投与は報酬欲求を減少させた(下段右)。

図2:オペラントホイールランニング課題において、ノーズポーク開始時に mNAc 神経活動は低下、ドーパミン放出量は上昇し(青枠)、ホイールランニング開始時にはいずれも上昇した(赤枠)。D1 阻害薬の全身投与はノーズポーク開始時の mNAc 神経活動低下を抑制した(紫枠)。
【用語解説】
※1 行動嗜癖
ある特定の行動や一連の行動プロセスに対する依存症。
※2 オペラント課題
自発的な反応(行動)の直後に報酬など特定の刺激を与えることで、その反応が生起する頻度を変化させる実験手続きを利用した課題。
※3 内側側坐核(medial nucleus accumbens, mNAc)
快感や報酬、意欲などの情報処理を担う脳領域。
※4 ドーパミン
脳内神経伝達物質の一つ。学習や報酬に対する応答などに関与する。
ジャーナル名:Neuropsychopharmacology
関連情報
金沢大学 医薬保健学域 薬学類/大学院医薬保健学総合研究科 薬学専攻・創薬科学専攻