溝上 敦 /泉 浩二さん 写真
Research NEWS

難治性前立腺がんの進行メカニズムを新たに解明 ―前立腺間質細胞との相互作用による前立腺がん細胞のKRASシグナル活性化を特定―

医薬保健研究域医学系、教授/医薬保健研究域医学系、准教授
溝上 敦 /泉 浩二MIZOKAMI, Atsushi/IZUMI, Kouji

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 金沢大学医薬保健研究域医学系泌尿器集学的治療学の溝上敦教授、泉浩二准教授、同大学大学院医薬保健学総合研究科医学専攻博士課程4年の神島泰樹(附属病院泌尿器科特任助教)を中心とする研究グループは、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)(※1)の中でも極めて治療が困難な、「ダブルネガティブ去勢抵抗性前立腺がん(DNPC)(※2)」の進行を支える新たな分子メカニズムを解明しました。

 近年、強力な新規ホルモン剤の普及に伴い、従来の腫瘍マーカー(PSA、NSE、ProGRP)が上昇しないまま画像検査で転移・進行が確認される「DNPC」の症例が急増しており、臨床上の大きな脅威となっています。本研究では、ホルモン療法によりアンドロゲン受容体(AR)(※3)シグナルが抑制されることで、前立腺がん細胞と周囲の前立腺間質細胞が相互作用し、がん遺伝子 KRAS(※4)を異常活性化させて細胞死(アポトーシス)を免れる一連のプロセスを特定しました。さらに、DNPCの特徴も持つ前立腺がん細胞株に対して汎KRAS阻害剤が増殖・遊走・浸潤を抑制し、細胞死を誘導することを証明しました。本研究成果は、有効な治療法がない DNPC に対する新規治療法開発に活用されることが期待されます。

 本研究成果は、2026年5月2日に英国科学誌『Cell Death & Disease』のオンライン版に掲載されました。

 

図:本研究の結果のまとめ

(A)AR阻害剤によるARの抑制
(B)前立腺がん細胞での FGFRの発現変化
(C)ARの抑制による前立腺がん細胞からのCCL2分泌
(D)前立腺がん細胞から分泌されるCCL2が前立腺間質細胞に作用
(E)前立腺間質細胞からのFGF8bの分泌
(F)前立腺間質細胞から分泌されたFGF8bが前立腺がん細胞に作用
(G)FGF8bの刺激で前立腺がん細胞のKRASシグナルが活性化
(H)活性化したKRASシグナルによる前立腺がんの増殖・浸潤・転移が促進
(I)EGFによるKRASシグナル活性化の影響は少ない

 

【用語解説】
※1 去勢抵抗性前立腺がん(CRPC:Castration-Resistant Prostate Cancer)
 ホルモン療法によって体内の男性ホルモン(アンドロゲン)を低下させても、再び増殖を始めた「治療抵抗性」の前立腺がんを指します。前立腺がん治療における克服すべき重要な課題の一つです。

※2 ダブルネガティブ去勢抵抗性前立腺がん(DNPC:Double-Negative Castration-Resistant Prostate Cancer)
 CRPC の中でも、AR と神経内分泌(NE)マーカーの両方が陰性(ネガティブ)であるタイプを指します。腫瘍マーカー(PSA、NSE、ProGRP)が上昇しないまま進行することが多く、既存の薬が効きにくい極めて難治性の高い病態です。

※3 アンドロゲン受容体(AR:Androgen Receptor)
 男性ホルモン(アンドロゲン)と結合して、前立腺がんの増殖を促す役割を果たすタンパク質です。現在の前立腺がん治療の多くは、このARの働きを抑えることを目的としています。

※4 KRAS
 細胞の増殖や生存を制御する司令塔のような役割を持つ遺伝子です。多くのがんで変異が見られる重要な「がん遺伝子」ですが、本研究では変異がなくても周囲の環境によって異常活性化し、前立腺がんを悪化させることを解明しました。

 

 

プレスリリースはこちら

ジャーナル名:Cell Death & Disease

研究者情報:溝上 敦
泉 浩二
神島 泰樹

関連情報

金沢大学 大学院 医薬保健学総合研究科・医薬保健学域 医学類

 

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