HaKaSe+(ハカセプラス)選抜学生として、発生生物学の研究に取り組む、新学術創成研究科ナノ生命科学専攻博士後期課程1年(取材当時)の寺西亜生さん。博士後期課程への進学のきっかけや研究の面白さについてお聞きしました。(インタビュー動画は公式研究instagramでご覧いただけます。)
なぜ博士後期課程に進学されたのか、そのきっかけを教えてください。
もともと研究者になりたいという思いがあり、大学に入った頃から博士課程に進みたいと考えていました。大きな影響を受けたのは父の存在です。父も研究者で、家で論文を書いている姿を小さい頃から見てきました。当時は特別に意識していませんでしたが、研究について楽しそうに話す姿が印象に残っています。今思えば、そんな姿に憧れを感じていたのだと思います。
父は一度企業に就職した後、やはり研究の道に進みたいとの思いが強く、苦労しながら博士課程に進学したと聞いています。そういうこともあって、進学をすんなり認めてもらえました。HaKaSe⁺の経済的支援がバックにあったことも大きいですね。

生物分野を選んだ理由はありますか?
父や祖父のルーツが石川県にあり、子どもの頃からよく来ていました。出身地の大阪とは違う自然の中で過ごす時間が多く、生き物に触れる機会が多かったです。その中で生き物の不思議をもっと知りたいという気持ちが芽生え、それが生物学の研究を志すきっかけになりました。好奇心旺盛な性格もあり、ものづくりや科学クラブでの実験など、さまざまなことにチャレンジしてきたことも、自分のオリジナリティにつながっていると感じています。

現在、どのような研究をされているのですか?
生き物の複雑な形がどのようにできあがるのか、その過程を明らかにすることを目的に、発生生物学の研究をしています。生物学に加えて、物理学や工学などさまざまな分野の知見を統合しながら、生き物の根源的な問いに迫っていくところに魅力を感じています。
具体的には、組織や臓器の表面を形づくるのに重要な「上皮組織」の折りたたみに着目しています。わかりやすく言うと、私たちの体も折り紙みたいに上皮組織が何度も折れ曲がることによって複雑な構造ができてくるわけですが、「一度折れたシートが元に戻らない」ことがとても重要なのです。この不可逆的な折り目が上皮組織でどのように生じるのかを、材料力学的な解析と細胞生物学的な解析を組み合わせて研究しています。顕微鏡で観察しているときが一番好きで、美しい画像が撮れたときのうれしさや、まだ誰も見たことのないデータが出てきたときのワクワク感は格別です。

HaKaSe⁺で役立った支援やプログラムを教えてください。
一番は旅費の支援で、シンガポールと台湾の国際学会に参加させていただきました。第一線で活躍されている研究者と直接議論できたのは自分にとって大きなプラスになりました。子どもの頃、研究者同士で話す父の姿が楽しそうだったのですが、自分が学会などでそうした議論を交わしてみると本当に面白く、あの時の父の気持ちが少し理解できた気がしました。
また、年に一度開催される「異分野への扉」というイベントでは、HaKaSe⁺の他分野の学生と混ざり合ってグループワークを行い、「自分の研究が社会課題にどう貢献できるか」「ほかの研究と共同で何ができるか」を考える機会があり、とても勉強になっています。

研究の息抜きはどのようにされていますか?
運動しないといけないと思って自転車に乗るようになったら、すっかりハマってしまい、今は大学への通学も自転車です。研究に行き詰まったときや気分転換したいときは、少し遠くまで走ることもあります。気が付いたら、能登半島の付け根や加賀方面まで、往復70kmも走っていたことがあり、家まで戻るのが大変で「こんな遠くまで来るんじゃなかった」と思いながら漕いで帰りました(笑)。
最後に、将来の夢を聞かせてください。
将来もアカデミアの世界で研究を続けていきたいと思っています。生き物が持つ大きなポテンシャルに迫り、世の中の人が驚くような現象を発見したいですね。生き物の面白さを多くの人に伝えながら、最終的にはその知見を社会に還元できるような研究者になることが目標です。

※所属・学年・年次などはすべて取材当時のものです。ご了承ください。
(ライター・木戸 珠代)