スリランカ出身のDilini Nisansala HETTIMUDALIGEさんは、HaKaSe+(ハカセプラス)選抜学生として、新学術創成研究科 ナノ生命科学専攻 博士後期課程(取材当時1年)で世界的にも新しい技術開発に取り組んでいます。金沢大学を選んだ理由から研究の醍醐味、将来の夢までたっぷりと語ってもらいました。(インタビュー動画は公式研究instagramでご覧いただけます。)
金沢大学を選んだ理由を教えてください。
私の母国のスリランカには、ナノテクノロジー分野で非常に有名な、C.A.N.Fernando教授がいらっしゃいます。彼の研究に感銘を受け、私はスリランカの大学で学士課程の学位を取得後、ナノサイエンスの博士号を取得するために彼の研究室に参加したいと考えていました。インターネットで調べたところ、Fernando教授が金沢大学で博士号を取得(1995年9月)したと知り、彼のキャリアを形づくった環境に興味を持つようになりました。さらに調べるうちに金沢大学ナノ生命科学研究所(WPI-NanoLSI)の存在を知り、ナノテクノロジーと生命科学のほか、化学や生物学などさまざまな分野を横断する学際的研究に重点を置いているところに大きな魅力を感じました。そこでWPI-NanoLSIの福間剛士所長に金沢大学大学院進学について直接メールで連絡をとり、現在の主任指導教員となる新井敏教授を紹介していただきました。2度の面接を経て、博士前期課程の学生として受け入れていただき、現在につながっています。
金沢大学は研究環境にとても恵まれています。スリランカではなかなか手に入らない化学薬品や必要な試薬も利用でき、共焦点蛍光顕微鏡などの最先端研究設備も充実しています。また、私の主任指導教員は議論を常に歓迎してくれます。例えば、私が実験で行き詰まったときにはいつでも相談に乗ってくれるほど熱心です。そして、具体的な答えを与えるのではなく、「これは良い、ここは改善できる」と方向性を示してくださるので、自分で考えて解決する能力が自然と身についたと感じています。
なぜ博士後期課程に進学されたのか、そのきっかけを教えてください。
2年間の博士前期課程の間に、実験を通じて新しい発見をする喜びを知ったからです。研究のプロセスが楽しくて、もっと深く探究したいという気持ちが芽生え、「この道を進もう」という気持ちが固まりました。いつか立派な研究者になるという夢に向かって、博士号取得を目指すことにしたのです。
私は、もともと好奇心が旺盛で、毎日新しいことを学ぶことが純粋に楽しいと感じています。この好奇心が、未知への問いを立て、自分自身に挑戦し続ける原動力となっています。
現在、どのような研究をされているのですか?
特定の細胞小器官を選択的に加熱する技術の開発に焦点を当てています。「光熱変換色素」と呼ぶ特殊な染料分子を細胞に取り込ませ、核・ミトコンドリア・小胞体などの目的の細胞小器官に近赤外線を照射することで、そこだけを局所的に加熱することができます。そして細胞のストレス応答がどのように異なるかを調べます。これは世界でも新しい技術で、ほとんど未開拓のアプローチです。この技術を使えば、がんだけでなく、ミトコンドリア関連の疾患と言われるパーキンソン病やアルツハイマー病の治療への応用が期待されます。
私は、これまでに核やミトコンドリアを標的にできる2つの染料を合成することに成功しました。染料が細胞内で思うように機能しないことも多く、何度も修正を重ねた結果、染料の合成にこぎつけるまでに1年半もかかりました。
ほかにも、熱が思ったように上げられないといった技術的な課題も残っています。この局所加熱技術の研究はまだ始まったばかりです。実際に医療へ応用されるには、10年、20年という長い時間が必要になるかもしれません。
将来の目標や夢を聞かせてください。
現在取り組んでいる熱技術の研究を、実用化できるレベルまで発展させることが当面の目標です。将来的には、日本で独立した研究者として活躍し、最終的には自分の研究室を主宰するPI(研究室主任)になることが夢です。そのためには、科学的知識や技術的スキル、研究マインドをさらに発展させる必要があります。博士後期課程を通して、その基盤を築いていきたいと考えています。

プライベート時間の過ごし方について教えてください。
読書が好きで、図書館に行くとリラックスした気分になります。映画鑑賞やアニメキャラクターの塗り絵を楽しむこともあります。旅行も好きで、富士山や上高地の美しい自然にふれて、リフレッシュできました。
最後に、博士課程の留学を考える人へのメッセージをお願いします。
私は、スリランカから金沢大学の博士前期・後期課程に進学し、世界的に新しい技術を開発するチャンスに恵まれました。充実した研究設備、手厚い指導、そして万全のサポートが揃っている金沢大学は、革新的な研究に挑みたい人にとって、最高の環境だと思います。ここでなら、きっと将来優れた研究者へと成長できるはずです。
※所属・学年・年次などはすべて取材当時のものです。ご了承ください。
(ライター・木戸 珠代)