金沢大学環日本海域環境研究センターの鈴木信雄教授、自然科学研究科生命理工学専攻博士後期課程/「知」の共創と往還で実現する新価値創造人材育成プロジェクト(HaKaSe⁺ for SPRING)選抜学生(研究当時)の黒田康平および理工学域生命理工学類4年の木村咲月、北里大学の高橋明義名誉教授および水澤寛太教授、文教大学の平山順教授、立教大学の服部淳彦特任教授および丸山雄介助教を中心とした共同研究グループは、キンギョのウロコ(図1)を骨モデルとして用いることで、メラニン凝集ホルモン(※)の魚類の骨に対する作用を初めて明らかにしました。
培地にメラニン凝集ホルモンを添加してキンギョのウロコを培養したところ、短時間では破骨細胞の遺伝子発現が抑制され、骨吸収の抑制が確認されました。一方、1日おきに10日間投与すると、再生ウロコで破骨細胞の活性化とカルシウム溶出が見られ、血中カルシウム濃度の上昇とカルシトニン分泌の促進も確認されました。これらより、メラニン凝集ホルモンは短期では骨吸収を抑制し、長期では間接的に促進する可能性が示されました。
本研究により、メラニン凝集ホルモンが魚類の骨代謝の調節に深く関与し、その処理方法により、作用が異なることが明らかになりました。ウロコには、骨芽細胞・破骨細胞・骨細胞が存在しており(図1)、メラニン凝集ホルモンはこれらの細胞に働きかけて骨形成と骨吸収を調節していると考えられます。これらの知見は、その分子機構の解明につながることが期待されます。
本研究成果は、2026年3月20日にイギリスの国際学術誌『Scientific Reports』のオンライン版に掲載されました。

図1:魚類のウロコの模式図
魚のウロコでは、石灰化した骨基質の上に骨芽細胞、破骨細胞、骨細胞が共存しており、ヒトの骨と同様に骨代謝が行われている。

図2:キンギョにおけるメラニン凝集ホルモン(MCH)の血漿カルシウム濃度(A)およびカルシトニン濃度(B)への影響 MCHを低用量[0.1 μg/g体重;MCH(L)]または高用量[1 μg/g体重;MCH(H)]で1日おきに腹腔内投与した。その結果、カルシトニンとカルシウム濃度は変化して、有意な正の相関を示した(C)。*および**は、それぞれ対照群と比較して統計的に有意な差があることを示す(それぞれ p < 0.05、p < 0.01)。サンプル数はn = 8。
© The Author(s) 2026. Scientific Reports. 本図は CC BY NC ND 4.0(改変不可・非営利利用可)の下で公開されています。
【用語解説】
※メラニン凝集ホルモン
体の色のもとになる「メラニン」という色素の分布を調節し、体の色を変えるホルモン。魚では、体色を薄くする方向に働き、環境に応じた色の変化に関与しています。さらに、食欲や睡眠などにも関与し、体のさまざまな機能を調節する役割を持ちます。本研究では、骨に対する作用について調べました。
ジャーナル名:Scientific Reports
研究者情報:鈴木 信雄
関連情報
金沢大学環日本海域環境研究センター
金沢大学 大学院 自然科学研究科