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金沢大学大学院新学術創成研究科ナノ生命科学専攻博士後期課程の市田光、水野皓介(現・大阪大学蛋白質研究所 博士研究員)、ナノ生命科学研究所(WPI-NanoLSI)の古寺哲幸教授、ホルガー・フレクシグ特任准教授、大阪大学蛋白質研究所の戸田聡准教授の共同研究グループは、血清タンパク質であるAfamin が、脂質修飾シグナル分子のWnt3a を安定化して運ぶ際の姿と動きの観察に成功しました。さらに、この二つの分子が正しく結合するためには、Afamin が持つ、Wnt3a の脂質を収容するための疎水性のポケット(※1)が必須であることを明らかにしました。
Wnt タンパク質は、体や臓器の形づくりから、それらを健康に保つための過程で欠かせない大切な分子です。しかし、水に溶けにくい性質(疎水性)を持つため、生体内では他の分子と協力しながら、水に溶けやすくなることで、安定して目的の細胞に運搬されます。本研究では、Wnt3a が別のタンパク質に助けられながら安定して運ばれる仕組みの一端が示されました。
本研究で得られた知見は、Wnt3a が関わる生命現象の仕組みの理解を深めるとともに、将来的には生体外での組織構築技術や再生医療分野への展開が期待されます。
本研究成果は、2026 年4 月15 日(現地時間)に米国化学会機関誌『Nano Letters』のオンライン版に掲載されました。

図1:高速AFM(※2)観察の模式図(左)とAfaminの連続した高速AFM画像(右)。 Afaminは大きい部位(赤色)と小さい部位(水色)からなり、柔軟に伸縮する様子が観察された。

図2:タンパク質の三次元原子構造モデルを推定する計算科学的手法による高速AFM画像の解析(左)とその解析結果よって色分けされたAfaminの構造(右)。 ピンクで示した領域は特定の構造を持たない領域でこの領域の中心でN末端側ドメインとC末端側ドメインを区別できることを明らかにした。また黄色で示した疎水性ポケットはAfaminのほぼ中央に位置している。

図3:Afamin/Wnt3aの連続した高速AFM画像(上)とその運動のモデル(下)。

図4:細胞表面に固定したAfamin変異体を用いた結合実験の概略図。 正常な疎水性ポケットをもつAfaminにはWnt3aが結合するが(左)、一部に変異が入るとWnt3aと結合しなくなる(右)。
【用語解説】
※1 疎水性ポケット
水に溶けにくい性質を持つ分子を受け入れやすい構造部分。本研究ではAfamin内部に存在していて、Wnt3aの脂質部分を保持するうえで重要な役割を担うことが示された。
※2 高速原子間力顕微鏡(高速AFM)
液中でタンパク質などの生体分子の形や動きを動画として観察できるユニークな顕微鏡技術。約0.1秒の時間分解能(10 画像/秒)で、分子の動きをリアルタイムに捉えることができる。空間分解能は水平方向(XY)で約1 nm、高さ方向(Z)で約0.1 nmであり、タンパク質のドメイン構造を識別できる程度の精度を備えている。
ジャーナル名:Nano Letters
研究者情報:古寺 哲幸
ホルガー・フレクシグ
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