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Research NEWS

西部北太平洋で粒子状チオールの広域分布を初めて解明

理工研究域物質化学系、准教授
黄 国宏WONG, Kuo Hong

 金沢大学理工研究域物質化学系の黄国宏准教授、長谷川浩教授、眞塩麻彩実准教授、東京大学大気海洋研究所の小畑元教授、長崎大学水産・環境科学総合研究科の近藤能子准教授らの共同研究グループは、西部北太平洋における粒子状チオール(システイン・グルタチオン)(※1)の広域分布を初めて明らかにするとともにその主要供給源が海洋の植物プランクトンであることを明らかにしました。

 本研究では、国際 GEOTRACES プログラムの一環として設定された GEOTRACES GP22 トランセクト(※2)で採取された海水サンプルを用い、粒子状チオールの詳細な分析を行うとともに、海洋性シアノバクテリア Synechococcus および珪藻 Thalassiosira nordenskioeldii の室内培養実験を組み合わせることで、海洋中に存在する粒子状チオールの起源と分布特性を多角的に明らかにしたものです。

 解析の結果、海域ごとのチオール濃度の違いが水塊特性・植物プランクトン組成・環境ストレスにより大きく左右されることが明らかになりました。特に、貧栄養で透明度の高い亜熱帯域の北太平洋中央水塊(NPCW)では、通常の生理生産だけでは説明できない高濃度のグルタチオンが検出され、死滅した植物プランクトン由来の懸濁粒子にグルタチオンが保持される“事前形成(preformed)型”グルタチオンの寄与が大きい可能性を見いだしました。

 これらの結果は、粒子状チオールが海洋中における微量金属の化学形態やプランクトンの環境応答と密接に関わることを示しており、海洋における有機硫黄化合物の循環理解に向けた重要な手がかりとなります。

 本研究成果は、2025 年 12 月 15 日(欧州時間)に国際学術誌『Science of the Total Environment』に掲載されました。

 

本研究の概要図:北太平洋における水塊の分布および各水塊における粒子状チオールの濃度分布と起源
Reprinted from Science of The Total Environment, Kuo Hong Wong et al. (2025), © Elsevier. Reprinted with permission.

【用語解説】
※1 粒子状チオール(システイン・グルタチオン)
 海水中の懸濁粒子(プランクトン細胞やデトリタスなど)に含まれる低分子有機硫黄化合物。金属結合能と抗酸化能を持ち、生物地球化学サイクルに関与します。
※2 GEOTRACES GP22 トランセクト
 国際 GEOTRACES プログラムの一環として設定された、西部北太平洋を亜寒帯域から赤道域まで南北に縦断する観測トランセクト(測線)です。GP22 では、海洋の金属元素や微量成分の分布と循環を明らかにするため、2022-2023 年に海洋研究船「白鳳丸」によって複数の水塊(PSUW、NPTZ、NPCW、NECC、PEW など)で海水が採取されました。本研究では、この GP22 トランセクトに沿って取得された表層〜亜表層の海水試料を用いて、粒子状チオール(システイン・グルタチオン)の分布と起源解析が行われています。

 

プレスリリースはこちら

ジャーナル名:Science of the Total Environment

研究者情報:黄  国宏
長谷川 浩
眞塩麻彩実

関連情報

金沢大学 理工学域 物質化学類
金沢大学 大学院 自然科学研究科

 

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