ガンマ線バーストのスペクトルと明るさの相関関係の起源を再現することに成功-宇宙最大の爆発現象の理論的解明へ前進-

掲載日:2019-4-3
研究

金沢大学理工研究域数物科学系の米德大輔教授,理化学研究所開拓研究本部長瀧天体ビッグバン研究室の伊藤裕貴研究員,長瀧重博主任研究員,数理創造プログラムのドナルド・ウォレン研究員らの国際共同研究グループは,国立天文台,理化学研究所,京都大学基礎物理学研究所のスーパーコンピュータを用いて,突発的に大量のガンマ線が降り注ぐ宇宙最大の爆発現象である「ガンマ線バースト」におけるスペクトルと明るさの相関関係(米徳関係(※1))を,数値シミュレーションによって理論的に再現することに成功しました。

ガンマ線バーストの放射機構の理論モデルとして,近年「光球面放射(※2)モデル」が注目を集めています。しかし,理論的な精査はまだ不十分であり,このモデルの妥当性を実証するには至っていませんでした。

今回,本国際共同研究グループは,相対論的流体シミュレーション(※3)と輻射輸送シミュレーション(※4)を組み合わせることによって,大質量星の爆発に伴う相対論的ジェット(※5)からの光球面放射の評価を行いました。その結果,ガンマ線バーストの観測から経験則として知られていた米徳関係が,ジェットが大質量星の外層を突き抜ける際に形成する構造に起因して,自然に再現されることを明らかにしました。この結果は,ガンマ線バーストの主な放射機構が光球面放射であることを強く示しています。経験則であった米徳関係の理論的基盤を示した本研究成果は,長年の謎となっていたガンマ線バーストの放射機構の解明に大きく貢献すると期待できます。

本研究成果は,4月3日午前10時(英国時間)に英国科学雑誌『Nature Communications』のオンライン版に掲載されました。

 

 

 

 

図. 米徳関係と数値シミュレーションの比較

相対論的ジェットの非一様な構造に起因して,スペクトルのピークエネルギーが大きくなるほど,明るさの最大光度は高くなる傾向を示す。その結果,ニつの観測量の間には相関関係が生まれ,それが観測されている米徳関係をよく再現している。

 

 

 

【用語解説】

※1 米徳関係
明るい(最大光度が高い)ガンマ線バーストは,放射の主なエネルギーを保持しているガンマ線のエネルギー(スペクトルのピークエネルギー)が大きいことが経験則と知られており,その相関関係のことを指す。

※2 光球面放射
光子が物質による吸収や散乱の影響なく遠方へ到達できるようになる領域(光球面)から発せられる放射。

※3 相対論的流体シミュレーション
相対論的な流体力学の方程式を,計算機で数値的に解く方法。流速が光の速度に近い場合の流体のダイナミクスを記述するために用いられる。

※4 輻射輸送シミュレーション
輻射輸送方程式を,計算機で数値的に解く方法。輻射(光子)が物質と相互作用をしながら伝搬する様相を記述するために用いられる。

※5 相対論的ジェット
ほぼ光の速度で伝搬する,ビームのように細く絞られたアウトフロー。

 

詳しくはこちら

Nature Communications

・ 研究者情報:米德 大輔

 

FacebookPAGE TOP