笠原 禎也/松田 昇也さん 写真
Research NEWS

宇宙の電磁波の通り道「ダクト」がつくる
脈動オーロラは朝に多い!
~過去7年分の地上-衛星同時観測から明らかに~

学術メディア創成センター・理工研究域先端宇宙理工学研究センター、教授 /理工研究域電子情報通信学系・理工研究域先端宇宙理工研究センター、准教授
笠原 禎也/松田 昇也KASAHARA, Yoshiya/MATSUDA, Shoya

 金沢大学学術メディア創成センター/理工研究域先端宇宙理工学研究センターの笠原禎也教授、理工研究域電子情報通信学系/先端宇宙理工研究センターの松田昇也准教授は、総合研究大学院大学博士後期課程/国立極地研究所特別研究員の伊藤ゆり氏らを中心とする研究グループとともに、北欧の地上カメラで観測された「脈動オーロラ(※1)」と、あらせ衛星(※2)が観測した「コーラス波(※3)」の同時観測を統計的に調査しました。その結果、宇宙空間の「ダクト(※4)」構造がコーラス波の「長距離」伝搬と脈動オーロラの「パッチ状」構造を支配しているという先行研究の物理モデルが、80%超える割合で成立することを実証しました。また、このモデルを満たすようなオーロラの発生頻度は、真夜中から朝方にかけて上昇することも本研究で初めて示されました。

 本研究で検証された物理モデルの基盤となる、長距離伝搬するコーラス波とダクト構造の関係は、笠原教授がPI(主任研究者)、松田准教授がデータマネージャを務める、あらせ衛星搭載のプラズマ波動観測器による観測によって明らかになりました。また本学の理工研究域先端宇宙理工学研究センターでは、「いつ・どこで・どのように」ダクト構造が形成され、その中を宇宙の波が伝搬するかの解明するため、超小型衛星「IMPACT」の開発を進めています。今回の成果は、IMPACTによる将来の観測研究にも重要な科学的基盤を提供するものです。

 パッチ状脈動オーロラとダクト構造の関係を明らかにしたことで、脈動オーロラのパッチ構造から超高エネルギー電子の分布を可視化することにつながると期待されます。

 本研究成果は、2026年7月2日に学術論文誌『Journal of Geophysical Research: Space Physics』に掲載されました。

 

図1:先行研究および本研究で示したモデルの概要
 真夜中前(夕方側)ではコーラス波の発生そのものが少ない。真夜中付近になるとコーラス波が発生し、脈動オーロラも出現する。真夜中以降(朝側)では、ダクトによるコーラス波の長距離伝搬と超高エネルギー電子散乱、およびパッチ状脈動オーロラの発生が多くなる。

 

【用語解説】

※1 脈動オーロラ
 数秒から数十秒の周期で明滅を繰り返すオーロラ。パッチ状に決まった構造を持つタイプと形状が不定形な非パッチ状のタイプに大別され、パッチ状脈動オーロラは非パッチ状脈動オーロラよりも遅い時間帯(より朝側)に多いことが先行研究で示されてきている。

※2 「あらせ」(ERG: Exploration of energization and Radiation in Geospace)
 地球磁気圏の放射線帯を形成する高エネルギー電子の生成・消失プロセスの解明を目的とした、日本のジオスペース探査衛星。

※3 コーラス波
 地球近傍の宇宙空間である磁気圏の赤道面付近で発生する自然の電磁気的なプラズマ波動。高エネルギー電子を散乱させ、降下させる役割を持つ。

※4 ダクト
 磁気圏において電子密度が周辺よりも極端に高い、あるいは低い管状の構造。光ファイバのように、密度の違い(屈折率の違い)によって波をダクト内に閉じ込めて長距離伝搬を促すと考えられている。

 

プレスリリースはこちら

ジャーナル名:Journal of Geophysical Research: Space Physics

研究者情報:笠原 禎也
松田 昇也

関連情報

金沢大学 理工研究域 先端宇宙理工学研究センター

金沢大学 理工学域 電子情報通信学類

金沢大学 大学院 自然科学研究科

 

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