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Research NEWS

二重特異性抗体の抗腫瘍効果発揮のメカニズムを解明!

医薬保健研究域医学系/ナノ生命科学研究所、教授
矢野 聖二YANO, Seiji

 金沢大学医薬保健研究域医学系呼吸器内科学/ナノ生命科学研究所(WPI-NanoLSI)の矢野聖二教授、附属病院検査部の佐藤成樹特任助教、がん進展制御研究所ゲノム生物学研究分野/ナノ生命科学研究所(WPI-NanoLSI)の酒井克也准教授らの共同研究グループは、肺がんに新たに認可された二重特異性抗体(※1)アミバンタマブ(※2)が、肝細胞増殖因子受容体 MET(※3)への結合を介して上皮成長因子受容体 EGFR(※4)に強く結合し、強力に抗体依存性細胞障害反応(ADCC)(※5)を惹起して肺がん細胞を死滅させることを初めて明らかにしました。

 アミバンタマブは EGFR と MET の両方に結合する二重特異性抗体で、これまでの EGFR に対する抗体(抗 EGFR 抗体)を凌駕する臨床効果を発揮し、2024年 11 月に肺がんに認可されました。しかし、「なぜ抗 EGFR 抗体を上回る抗腫瘍効果を発揮するのか?」そのメカニズムは不明でした。

 本研究グループは、ナノ生命科学研究所が開発している高速原子間力顕微鏡(※6)による観察などで、アミバンタマブが MET 存在下において、より強力に EGFR に結合することを発見しました。また、この作用によりアミバンタマブが肺がん細胞表面の EGFR と MET に強力に結合し、効率よく免疫細胞をがん細胞に近づけることで、強い ADCC を惹起して肺がん細胞を死滅させることを見出しました。

 本研究成果は、アミバンタマブの抗腫瘍効果発揮に MET への結合が重要な役割を果たしていることを明らかにした初めての報告であり、今後の新たな二重特異性抗体開発の起爆剤になることが期待されます。

 本研究成果は、2025 年 11 月 9 日に日本癌学会機関誌『Cancer Science』にオンライン掲載されました。

 

図1:二重特異性抗体アミバンタマブの模式図

 

図2:アミバンタマブの予測構造と高速原子間力顕微鏡で観察した像
(白の矢頭はEGFRとMETとの結合部位を示している)

 

【用語解説】

※1 二重特異性抗体
 従来のモノクローナル抗体とは異なり、一つの抗体分子が二種類の抗原と結合する。

※2 アミバンタマブ
 EGFR(上皮成長因子受容体)および MET(肝細胞増殖因子受容体)を標的とした完全ヒト型二重特異性モノクローナル抗体。

※3 MET
 肝細胞増殖因子(HGF:hepatocyte growth factor)の受容体で肺がんをはじめとする多くのがんで高発現するため、治療標的のひとつと考えられている。

※4 EGFR
 上皮成長因子受容体。肺がんでは、エクソン 19 欠失やエクソン 21 の L858R変異やエクソン20挿入変異によりがん化することが知られている。これらEGFR変異陽性の肺がんの治療薬として EGFR チロシンキナーゼ阻害薬やアミバンタマブが承認されている。

※5 抗体依存性細胞障害反応(ADCC:antibody-dependent cellular cytotoxicity)
 抗体が腫瘍抗原を認識して結合し、ナチュラルキラー(NK)細胞を含む免疫細胞による腫瘍細胞の殺傷が増強される免疫反応。

※6 高速原子間力顕微鏡(HS-AFM:High speed atomic force microscope)
 ナノスケールのサンプルを大気中でも溶液中でも「動画」で可視化できる顕微鏡。 従来型 AFM には、静止画でしか撮れないという重大な欠点があった。 従来型 AFM の「走査速度の遅さ」を克服し、リアルタイム動画測定を実現した。

 

プレスリリース

ジャーナル名:Cancer Science

研究者情報:矢野 聖二
佐藤 成樹
酒井 克也

関連情報

金沢大学 大学院医薬保健学総合研究科・医薬保健学域医学類

金沢大学 ナノ生命科学研究所

金沢大学 がん進展制御研究所

金沢大学 附属病院

 

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