金沢大学自然科学研究科博士後期課程 1 年の中原悠吾、ナノマテリアル研究所のシャヒドゥザマン モハマド准教授、當摩哲也教授の研究グループは、ペロブスカイト太陽電池の大気下成膜と長寿命化に成功しました。
ペロブスカイト太陽電池は、印刷技術による低コスト製造が可能な次世代型太陽電池として、脱炭素社会の実現に向けて注目されています。本研究グループは、これまで、従来のシリコン太陽電池の「重い」「価格が高い」といった課題を克服するため、“ロールツーロール法(R2R 法)”(図 1)による大量生産技術の開発に取り組んでいます。特に、ペロブスカイト層の水分による劣化を防ぐため、イオン液体を添加することで疎水性を高めて耐久性を向上させる技術を開発し、報告しています(参考文献 1)。しかしこの報告では“スピンコート製膜法”(図 2)という製膜法を用いており、窒素ガス雰囲気下で小さなガラス基板を高速回転させて膜を形成します。一方で R2R 法では、大気下でメートルサイズのフィルムを数分かけて乾燥させる必要があるため、イオン液体添加技術の適応性に懸念がありました。
そこで本研究では、R2R 法と同じ製膜法である“バーコート製膜法”(図 3)を用いて、大気下でもイオン液体添加技術が適応できるか検証しました。その結果、スピンコート製膜法に比べて乾燥時間が数桁長い乾燥時間 5 分の条件では、結晶粒界(※1)の少ないマイクロメートルオーダーの欠陥のない巨大な結晶を形成することが分かりました。また、大気曝露試験(※2)では、1200 時間を超えても初期性能の 9 割を保持し続けることが分かりました。
この技術は株式会社麗光(本社:京都府京都市、代表取締役社長:岩井順一)との共同研究により開発され、同社は現在、この成果の一部を用いて環境省 R&D 事業の一環として、横浜港大さん橋国際客船ターミナル屋上広場にて、港湾苛烈環境下での大規模
実証試験を行っています(図 6)。
本研究成果は、2025 年 11 月 13 日に『Solar Energy Materials and Solar Cells』のオンライン版に先行掲載され、2026 年 1 月 15 日に正式掲載されました。

図 1. ロールツーロール法(R2R 法):株式会社麗光 R2R 装置の写真(左)とその模式図(右)

図2. スピンコート製膜法:スピンコート装置写真(左)とその模式図(右)

図3. バーコート製膜法:本研究で使用したバーコート装置写真(左)とその模式図(右)

図6. 横浜港大さん橋国際客船ターミナル屋上広場に設置されているペロブスカイト太陽電池モジュール。モジュールサイズは30cm×1m。
【参考文献1】
・https://www.kanazawa-u.ac.jp/rd/92312/
金沢大学プレスリリース「イオン液体を一滴加えるだけでペロブスカイト太陽電池の高性能化と長寿命化に成功!」2021年4月
【用語解説】
※1 結晶粒界
結晶のかたまり同士の境界のこと。この領域では結晶配列が乱れて欠陥となっており、電気的性質などに大きな影響を与えます。
※2 大気暴露試験
水や酸素が含まれる通常大気に暴露して性能変化を検査する試験。本研究では温度をおよそ 25 度に調整して試験を行いました。
ジャーナル名:Solar Energy Materials and Solar Cells
研究者情報:モハマド シャヒドゥザマン (ソヘル)
當摩 哲也
関連情報
當摩・ソヘル研究室のWebサイト:https://taimalab.wixsite.com/mysite
理工学域 Webサイト:https://www.se.kanazawa-u.ac.jp/
自然科学研究科 Webサイト:https://www.nst.kanazawa-u.ac.jp/
ナノマテリアル研究所 Webサイト:https://nanomari.w3.kanazawa-u.ac.jp/