自閉スペクトラム症グレーゾーンに関わる遺伝要因を解析

金沢大学子どものこころの発達研究センターの塩田友果修士研究員(兼 大阪大学大学院連合小児発達学研究科博士課程),廣澤徹准教授,横山茂教授,および医薬保健研究域医学系精神行動科学の菊知充教授らの共同研究グループは,自閉スペクトラム症(ASD)(※1)関連遺伝子の一塩基多型(SNP)(※2)と心理検査・知能検査のデータを解析し,特定のアレル(対立遺伝子)(※3)を持つ定型発達児は,特定のアレルを持たない児に比べて自閉的特性が高く,知能指数が低いことを報告しました。

ASDのコミュニケーション障がいや特定の物事に対するこだわりに関係するアレルの研究によって, ASD発症と相関するSNPが見出されていました。しかし, ASDの診断基準を満たさない子どもたちにおいても, この関係があるのかどうかは不明でした。本研究グループは,知的能力の発達に遅れのない定型発達児およびASD児を対象に解析を行いました。その結果,ASD児では定型発達児に比べて特定のアレル頻度が統計学的に有意に高いだけでなく, 定型発達児においてもこのアレルの有無によって自閉的特性および知能指数に有意な差があることが認められました。

これらの知見は将来,診断閾下ASDの検出に役立つ可能性があり,ASDの診断基準を満たさないが,コミュニケーションが困難な子どもの理解と早期支援につながることが期待されます。

本研究成果は,2021年12月14日に米国の科学雑誌『PLOS ONE』のオンライン版に掲載されました。

 

 

図1. アレルの有無による自閉的特性の差

ASD児では定型発達児に比べて特定のアレル頻度が統計学的に有意に高いだけでなく,定型発達児においては, A-アレルを持つ児(AA 型/AG 型)は,持たない児(GG 型)に比べて 自閉的特性が強いことが分かる。

 

 

 

 

【用語解説】

※1 自閉スペクトラム症(ASD)
社会的相互作用,コミュニケーション,想像力などの面で通常のヒトと異なった発達を示す,神経発達症のひとつ。自閉スペクトラム症を持つ人の多くに知的障がいが併存することがある。

※2 一塩基多型(SNP)
DNAの中のある1塩基が別の塩基に置き換えられて生じた多様性(バリエーション)のことで, 一般に人口集団の約1%が保有するコモンバリアントの一種。SNPはゲノム上に多数あり,個々のSNPのASD発症への寄与は小さいものの,それらが組み合わさることによって発症に与える影響が大きくなると考えられている。

※3 アレル(対立遺伝子)
遺伝子座(ある特定の形質に関する遺伝情報が存在する染色体の部位)にある遺伝子は,父親と母親からそれぞれ情報を受け継ぐ。このとき相同の遺伝子座にあって,塩基配列の差異によって異なる遺伝情報を有する遺伝子をアレル(対立遺伝子)という。ヒトを含む2倍体の生物は,それぞれの遺伝子座について2つのアレルを持っている。

 

 

詳しくはこちら(PDF)

PLOS ONE

研究者情報:廣澤 徹

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