肝臓がんの悪性化に寄与する分子シグナルを特定

金沢大学附属病院の丹尾幸樹助教らの研究グループは,肝臓がんのがん幹細胞の活性化につながる分子シグナルを特定しました。

がん幹細胞は,他のがん細胞を生み出す供給源であり,がんの形成や成長の原因となる細胞です。また,がんの転移・再発などにも,深く関与していることが知られており,がん治療において重要な治療ターゲットと考えられています。

本研究では,まず,骨形成タンパク質9(BMP9,※1)の発現量が多い肝臓がん患者は,BMP9の発現量が少ない患者よりも生存期間が短く,BMP9の発現が予後と関連していることも明らかになりました。また,BMP9が,その分子シグナルの下流にある転写因子であるDNA結合阻害タンパク質1(ID1,※2)を介して,肝臓がんのがん幹細胞を活性化し,細胞の増殖や浸潤能,遊走能といったがん幹細胞の性質を促進していることを発見しました。さらに,BMP9からID1へと伝達されるシグナルを阻害する薬剤が,肝臓がんの腫瘍増大を抑制する効果を有する事が明らかになりました。

本研究の成果は,BMP9-ID1シグナルが肝臓がんのがん幹細胞を活性化する重要な伝達経路である事を解明し,その伝達経路を阻害することで,肝臓がんの進行を抑制する可能性を示唆するものです。今後は,肝臓がんの既存治療と組み合わせた時の相乗効果があるかなどさらに検討を進め,将来的により効果的な肝臓がん治療法の開発につながることが期待されます。

本研究成果は,2021年4月9日に国際学術誌『Molecular Oncology』のオンライン版に掲載されました。

 

 

  

 

 

【用語解説】
※1  骨形成タンパク質9
骨形成タンパク質は,骨形成に関与する因子として同定されたが,骨の他,胎生期の肝発達にも関与する事が知られている。骨形成タンパク質9は近年,肝臓の線維化や肝臓がんの進展に関与する因子として注目されている。

※2  DNA結合阻害タンパク質1
哺乳類では4種類が同定されているDNA結合阻害タンパク質は,細胞の分化抑制や増殖促進活性を示す事が知られている。種々のがん組織で発現上昇が確認されており,がんタンパク質としてその機能解析が進められている。

 

Molecular Oncology

研究者情報:丹尾 幸樹

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