マスメディアから観る日本社会におけるLGBTQの認識

掲載日:2021-10-26
研究

金沢大学人間社会研究域歴史言語文化学系のTimo Thelen講師は,日本放送協会(NHK)の朝の連続テレビ小説を通した考察から,日本におけるLGBTQに対する認識に保守的な側面があること明らかにしました。

LGBTQ は,レズビアン(Lesbian),ゲイ(Gay),バイセクシュアル(Bisexual),トランスジェンダー(Transgender),クィア(Queer)あるいはクエスチョニング(Questioning)の頭文字を組み合わせた言葉です。最近では,世界でも,そして日本でもLGBTQに対する社会的な認知が広がり始めています。夏に開催された東京オリンピックにおいても,LGBTQの選手たちの活躍が注目を集め,多様性が尊重される社会へ向けて,大きな契機となりました。

LGBTQの人たちが,自分自身として生きることができる社会の実現のためには,その社会に住む人々全体の意識が非常に重要です。また,そのためには,人々が目にするマスメディアが大きな役割を担っています。本研究では,2018年に放送された,NHKの連続テレビ小説『半分、青い。』を例として取り上げ,その中に登場するゲイの登場人物を通し,日本社会におけるLGBTQ対する保守的な観点の存在を明らかにしました。また,マスメディアにおけるステレオタイプのLGBTQの可視化が,さまざまある課題の表面をなぞっているだけに過ぎず,LGBTQの人たちが日々抱えている真の問題の解決に向けた取り組みの妨げになっている可能性も指摘しました。

小説やドラマ,報道番組などのマスメディアに登場するLGBTQの人々の扱いは限定的なものにとどまらざるを得ないこともあります。本研究の成果は,そのことを認識しつつ,より包括的な観点から,LGBTQの人々が抱える課題に,社会が協力して取り組むことの重要性を示すものです。

本研究成果は,2021年7月12日に国際学術誌『Japanese Studies』のオンライン版に掲載されました。

 

 

 

 

Japanese Studies

研究者情報:Timo Thelen

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