ニコチンアミドを用いた安全で効果的に小麦の赤かび病の予防法を開発

金沢大学疾患モデル総合研究センターの西内巧准教授らの研究グループは,ビタミンの一種であり,安価で安定なニコチンアミドが小麦の赤かび病に対する抵抗性を強化する働きを持つことを発見しました。

小麦や大麦の赤かび病は,開花期に赤かび病菌が穂に感染することによって生じる病害で,発病すると作物の収穫量の減少に加えて,本菌が産生するかび毒が穀粒やそれらを原料として食品に混入することにより,ヒトや家畜に下痢や嘔吐などの健康被害を及ぼします。現在は,殺菌性農薬の穂への散布が主な防除法ですが,残留すると安全性に問題があることに加え,耐性菌が報告されており,これらに代わる安全で効果的な防除法の開発が求められています。この問題の解決に向けて,本研究グループは赤かび病の防除に有効な天然化合物の探索を行っています。

これまでの研究で,ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)を小麦や大麦の開花期の穂に散布すると,赤かび病に対する抵抗性が強化されることを明らかにしていました。しかしながら,ニコチンアミドモノヌクレオチドが不安定で高価なことが実用化の支障になっていました。類似した構造を持つ化合物の中から,ニコチンアミド(NIM)が穂における赤かび病菌の増殖およびかび毒汚染を顕著に抑制することを見いだしました。ニコチンアミドは安価で安定な物質であり,さらにニコチンアミドモノヌクレオチドよりも予防効果が高いことを明かにしました。また,包括的な代謝物分析により,ニコチンアミド散布によって複数の抗菌物質や抗酸化物質の増加が見られることが分かりました。

ニコチンアミドは肉や魚,豆などにも含まれ,サプリメントとしても使用されている安全性の高い化合物です。また,殺菌性農薬のように病原菌に直接作用するのではなく,植物に作用して病害抵抗性を向上させることから,耐性菌が出現しにくいという特徴があります。加えて,ニコチンアミドは安価で常温保存が可能であり,小麦における赤かび病の発病抑制効果が従来の化合物よりも高いことが示されました。今後は,本研究で見いだしたニコチンアミドを活用することで,安全で効果的な赤かび病の予防技術の実用化が期待されます。

本研究成果は,2021年3月15日に国際学術誌『International Journal of Molecular Sciences』のオンライン版に掲載されました。

図1.

ニコチンアミド等を小麦の穂に予め噴霧して,赤かび病菌を接種して7日後の病徴を観察すると,ニコチンアミド投与により,水処理に比べて有意に発病が抑えられていた。

 

図2.

実際にニコチンアミドを噴霧した小麦の穂では,水処理に比べて,赤かび病菌の菌体量およびかび毒(デオキシニバレノール)蓄積が顕著に減少していた。

 

 

 

 

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