画像診断よりも優れた腫瘍マーカーの発見に成功!

金沢大学附属病院総合診療部の山下太郎准教授および医薬保健研究域医学系の金子周一教授と東京工業大,東京大学,アボットジャパン合同会社総合研究との共同研究グループは,肝がん発症の危険,転移の危険に関わる血液成分(血液マーカー)の同定に成功しました。

肝がんは年間約70万人が死亡する世界第3のがん死亡原因であり,日本でも毎年約3万人の患者が亡くなっています。C型肝炎ウイルス感染者は肝がんになる危険が高く,ウイルスの根治が可能となった現在でも肝がんになる危険がなくなることはありません。肝がんを診断する上で助けとなる新たな血液マーカーが求められていました。

研究グループは,これまでに細胞の接着や生存に関わる生体膜(基底膜)の主要成分であるラミニン(※1)の中でがん特異的に発現するラミニンγ2単鎖(LG2m)に着目し,血液検査で微量のLG2mを再現性よく測定できる手法の開発を行ってきました。今回,研究グループは,肝がん患者で血液中のLG2mを測定,LG2mが高い(60pg/ml以上)肝がん患者では低い患者(60pg/ml未満)に比べ約8-20倍,治療後に他臓器への転移(遠隔転移)が生じる危険が高いことを突き止めました。さらに研究グループは,C型慢性肝炎で治療によりウイルスが消失した肝がんのない患者で血液中のLG2mを測定し,LG2mが陽性(30pg/ml以上)の患者では陰性患者(30pg/ml未満)に比べ約20倍,肝がんを発症する危険が高いことを前向き多施設共同研究で明らかにしました(図1)。

今回の研究成果から,血液中の微量LG2mの存在は肝臓ががん化する過程,遠隔転移を起こす過程において生じる何らかの異常を反映している可能性が示唆されます。今回の知見からは将来的にC型慢性肝炎患者における肝がん発症の予測因子や,肝がん患者における遠隔転移の予測因子として血液中のLG2m測定が活用されることが期待されます。

本研究成果は,2021年2月20日に米国医学誌『Hepatology』にAccepted Articleとして掲載されました。

 

図1. 画像診断よりも優れた腫瘍マーカーの発見に成功

 

図2. LG2mと既存のがん腫瘍マーカーとの関係

 

図3. 診断時に血液中のLG2mが高値(60pg/ml以上)の肝がん患者は治療後に遠隔転移を起こすリスクが高い

治療として外科切除,もしくはラジオ派熱灼療法を受けた肝がん患者で治療前に測定。

 

図4. 血液中のLG2mが陽性(30pg/ml以上)のC型は慢性肝炎患者(治療後も含む)は経過で肝がんを発症するリスクが高い

 

 

 

 

【用語解説】
 ※1 ラミニン
基底膜を形成する巨大な糖蛋白質。ラミニンγ2鎖はラミニンα3鎖,β鎖と会合して基底膜の主要成分であるラミニン332を構成する。ラミニンγ2単鎖は悪性がんの浸潤先進部で発現が亢進するがん特異的に発現するラミニン分子として同グループの越川が見出した。

 

 

詳しくはこちら

Hepatology

研究者情報:山下 太郎

研究者情報:金子 周一

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