体内時計の障害が肥満をもたらすメカニズムの一端を解明

金沢大学医薬保健研究域医学系の安藤仁教授らの共同研究グループは,褐色脂肪細胞の体内時計が障害されると太りやすくなることを明らかにしました。

生体のさまざまな行動や生理機能には約24時間を1周期とする概日リズム(サーカディアンリズム)が認められ,生体の恒常性の維持に役立っています。そのため,不規則な生活を続けると,身体にさまざまな不調をきたし,肥満や高血圧,糖尿病などの生活習慣病を発症しやすくなります。近年,概日リズムの発振機構が解明され,その本体は時計遺伝子群からなる細胞内体内時計であること,体内時計はほぼすべての細胞に備わっていること,体内時計の障害は生活習慣病の一因であることが判明しました。しかしながら,体内時計障害が生活習慣病をもたらす機序については,まだ十分には分かっていませんでした。

褐色脂肪細胞は脂肪を分解し,熱を産生することで体温を維持します。そのため,褐色脂肪細胞の機能が低い場合には,太りやすく,生活習慣病になりやすいことが知られています。体温や褐色脂肪細胞の機能には概日リズムが認められることから,本研究グループは褐色脂肪細胞の体内時計に着目し,褐色脂肪細胞の体内時計は脂肪の利用や熱産生の概日リズムの形成に重要であり,これらのリズムが乱れた状態で高脂肪食を摂取するとより太りやすくなることを見出しました。

本研究の成果は,生活リズムの乱れが肥満をもたらす機序を明らかにするとともに,不規則な生活を送らざるを得ない人の生活習慣病の予防・治療法にも応用できるものと期待されます。

本研究成果は,2021年3年3日に国際学術誌『Molecular Metabolism』に掲載されました。

 

図.正常な状態では,体温を維持するために交感神経が働き,褐色脂肪細胞において脂肪から熱へのエネルギー変換が活発になるため,行動やシバリングによる熱産生の必要性は高くない。一方,褐色脂肪細胞の体内時計が障害された場合には,褐色脂肪細胞において脂肪から熱へのエネルギー変換が適切にできなくなるため,行動やシバリングにより体温を維持するようになる。

 

 

 

 

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