CRP遺伝子多型がPTSDの症状および認知機能に関わることを発見
~PTSDの病因解明や個別化治療法開発に役立つ可能性~

金沢大学国際基幹教育院(臨床認知科学研究室)の松井三枝教授は,国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター(NCNP) 精神保健研究所の研究グループと,NCNP神経研究所,名古屋市立大学,若松町こころとひふのクリニックとの共同研究で,心的外傷後ストレス障害(PTSD,※1)の症状や認知機能(※2)にCRP遺伝子(※3)が関与することを明らかにしました。

PTSDは,トラウマ体験をきっかけとして発症し,トラウマ記憶のフラッシュバックや悪夢などの症状のために日常生活や社会生活上に大きな支障を来す精神疾患です。しかし,トラウマを体験したすべての人がPTSDを発症するわけではなく,治療への反応性にも個人差があります。そのためPTSDの病因・病態には遺伝的な要因が関与しているものと考えられていますが,どの遺伝子が関係しているのかについては共通の見解が得られていません。

本研究グループは,PTSDの女性患者において,血液中のDNAを抽出し,CRP遺伝子rs2794520多型をPCR法(※4)により決定しました。また,血液中の炎症マーカーである高感度CRP,高感度tumor necrosis factor-α (TNF-α),IL-6の濃度を測定し,健常者と比較しました。その結果,炎症に関与するCRP遺伝子の一塩基多型(SNP,※5)がPTSDの症状と認知機能に関与することを明らかにしました。

本研究結果は,PTSDの病因解明や個別化治療法開発に貢献するものと考えられます。

この研究成果は,2020年11月1日に国際精神医学誌『Journal of Affective Disorders』にオンライン掲載されました。

 

 

【用語解説】

※1 心的外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder:PTSD)
生命の危険を感じるような出来事を体験・目撃する,重症を負う,犯罪被害に遭う,などの強い恐怖を伴う体験がこころの傷(=トラウマ)となり,時間がたっても強いストレスや恐怖を感じる精神疾患。

※2 認知機能
言葉などを記憶したり,物事に注意を向け,それに基づいて行動を組織したり,実際の作業を行ったりする脳の機能。

※3 CRP遺伝子
C反応性蛋白(C-reactive protein:CRP)は、体内で炎症が起きている際に増加するタンパク質であり,血中CRP濃度は炎症の鋭敏な指標として医療現場で広く使用されている。CRP遺伝子は,CRPをコードする遺伝子。CRP遺伝子のrs2794520多型は,血中CRP濃度に影響することが示されている。

※4 ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)
特定のDNA断片を選択的に増殖させることによって遺伝子検出を行う手法。

※5 一塩基多型(single nucleotide polymorphism:SNP)
ゲノムの中で1つの塩基が別の塩基に置き換わっているというゲノムの個体差(個人差)のこと。この違いが,体質の違い,特定の病気へのかかりやすさ,薬の効きやすさなどの個人差の要因になる場合がある。

 

詳しくはこちら

Journal of Affective Disorders

研究者情報:松井 三枝

 

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