アセチル化を施したクラフトリグニンから成る高引張強度性カーボンナノ繊維の生成

金沢大学理工研究域生命理工学系の髙橋憲司教授と国立研究開発法人物質・材料研究機構のサボ・ラスロICYSリサーチフェロー(研究当時:金沢大学理工研究域生命理工学系博士研究員)らの研究グループは,製紙工場などで排出される廃棄物を活用して,軽量で強固なカーボンナノ繊維を生成することに成功しました。

工場などから排出される産業廃棄物を効果的に再利用することは,地球規模の環境破壊や環境変動などの改善につながったり,製造コストの削減によりその産業自身のさらなる発展につながったりと,私たちの生活にとって非常に重要です。

本研究では,木材からパルプを製造する過程で排出されるクラフトリグニン(※1)を使用して,軽量かつ強固なカーボンナノ繊維を作成することに成功しました。アセチル化(※2)と呼ばれる手法を活用し,物質の化学構造を調節することで,従来の手法で生成されたカーボンナノ繊維よりも,引張強度が約3倍,弾性係数が約2倍という飛躍的な特性の向上を実現しました。

本研究の成果は,100%植物由来の炭素繊維複合材料の開発への扉を開くものです。本研究で開発された新しいカーボンナノ繊維は今後,石油由来のプラスチック複合材料の代替材料としての使用が想定され,環境に優しい複合材料の発展につながることが期待されます。

本研究成果は,2020年8月12日に国際学術誌『Chemical Engineering Journal』のオンライン版に掲載されました。

図1. クラフトリグニンから作成した炭素繊維の電子顕微鏡写真

 

図2. クラフトリグニンから作成した炭素繊維のラマン散乱スペクトル


【用語解説】
※1 クラフトリグニン
木材から紙の原料となるパルプを作る際に排出される,木材成分のリグニンからなる高分子の廃棄物。材料としての利用が難しいため,通常は燃料として燃やされる。

※2 アセチル化
カルボン酸の一種である酢酸基を導入すること。本研究の場合は,クラフトリグニンに含まれる水酸基に,化学反応を用いて酢酸基を導入している。

 

 

Chemical Engineering Journal

研究者情報:髙橋 憲司

 

 

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