北海道南西部・大沼の過去350年間の湖底堆積物を解析

金沢大学環日本海域環境研究センターの落合伸也助教および長尾誠也教授(同センター長)は,岐阜大学,北海道教育大学,岐阜聖徳学園大学との共同研究グループに参加し,北海道南西部の大沼の湖底堆積物と水質の調査を行った結果から,北海道駒ヶ岳の1640年以降における噴火活動の歴史を克明に記録していることを明らかにしました。また,大沼の湖底堆積物にはマンガンに富む律動的な縞状構造が認められ,その形成は夏のアジアモンスーンの降水強度を反映しており,1640年以降の北海道の夏の気候は大陸性の夏のアジアモンスーンの影響を強く受けてきたことを明らかにしました。

陸域環境で生じた過去の変動を記録している湖底の堆積物の堆積年代を高精度で推定することによって,信頼性の高い環境変動の復元を行うことが可能です。堆積物の火山灰層の同定は,堆積物の年代軸を正確に与えることができるため,古気候変動を正確に復元する上で重要となります。

北海道南西部の渡島半島に位置する大沼の湖底堆積物について,金沢大学環日本海域環境研究センターの尾小屋地下実験室で210Pb年代測定を行った結果,1640年と1929年,1996年の大噴火の際には,駒ヶ岳の火山噴出物は大沼に到達していることが分かり、産業総合研究所発行の地質図の結果とも整合することが判明しました。さらに堆積物中のマンガンを中心とした土壌分析と,湖水の水質分析を行った結果,この堆積物にはマンガンを主体とする縞模様が律動的に形成されており,その堆積は夏季の降水量が低下する時期に生じていることを明らかにしました。これにより,北海道周辺の夏季の降水量は1640年~1850年にかけて減少し,1860年~1930年にかけて増加したことが分かりました。

本研究成果は,2020年10月2日(金)に国際誌『Quaternary Science Reviews』に掲載されました。

 

 

図1. 北海道駒ヶ岳の噴出物の分布図

北海道南西部の渡島半島に位置する大沼とその集水域には,北海道駒ヶ岳が分布している(A)。1640年の大噴火以降に噴火が繰り返して発生しており,駒ヶ岳からの噴出物が山体とその周辺に分布している(B-C)。

 

図2.

地点1で2016年に採取した堆積物コアには,湖底から約45cmの位置に火山灰層が認められ,その年代が210Pb年によって1996年と特定された(A)。また,同地点で2012年に採取した堆積物コアには,湖底から約225cmの位置に火山灰層が確認されており,同様の火山灰層は地点2で2012年に採取した堆積物コアでも深さ110cmで認められた(B・C)。この火山灰層は,図1Bの駒ヶ岳起源の噴出物Ko-aの分布から,1929年の大噴火で生じたものであることが明らかとなった。

図3. 北海道南西部の古気候復元図

大沼の湖底堆積物中のマンガン含有量は小氷期に増加し,1900年ごろに減少する。それと反比例するように,降水指標を示すTi/Si比やハンノキ属の花粉数は小氷期に減少し,1900年ごろに最大となることが分かった。それにより,大沼におけるマンガンの沈殿は,降水量の少ない夏季のアジアモンスーンの強度に起因していることが明らかとなった。これらの時期は,韓国や中国で復元された夏季アジアモンスーン強度指標の変動と対応しており,その一方で,これらの変動は,中海(島根県)の貝形虫の記録から復元された夏季アジアモンスーン強度とは逆位相であることが分かり,北海道の数十年規模の夏の降水変動は,中国を中心とした大陸性気候の変動を強く受けていることが明らかなった。

 

Quaternary Science Reviews

研究者情報:落合 伸也

研究者情報:長尾 誠也

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