抗生剤処理した脂肪由来幹細胞を使用するインプラント治療術後の新しい感染症治療法の開発

金沢大学附属病院整形外科の吉谷純哉協力研究員と医薬保健研究域医学系の加畑多文准教授らの研究グループは,インプラント治療後に発生する感染症を治療するための新しい治療法を開発しました。

インプラントは,医療目的で体内に埋め込み使用される,金属やセラミックでできた医療器具です。現代の医療現場では,さまざまな形態のインプラントが使用されており,例えば,骨折した箇所をつなぎ合わせて安定させたり,また加齢により変形した関節への人工関節に使用したりなど,効果的な治療を行うために重要な役割を果たしています。しかしながら,まれに骨髄炎などの骨感染症を引き起こすケースもあり,そのような合併症に十分配慮した安全なインプラント治療法の確立が求められています。

本研究では,脂肪由来幹細胞(※)と抗生物質を混合してモデルラットに使用することで,インプラント関連感染症を効果的に治療できることを突き止めました。その結果,脂肪由来幹細胞は抗菌ペプチドの分泌能があり,抗生剤を含有することでインプラント周囲感染症に対し,優れた治療効果があることを明らかにしました。

本研究の成果は,脂肪由来幹細胞がインプラント感染症への治療に応用が可能であることを示すものです。今後は,難治性インプラント周囲感染症治療のための脂肪由来幹細胞製剤や抗生剤との併用治療の発展につながることが期待されます。

本研究成果は,2020年7月7日に国際学術誌『Scientific Reports』のオンライン版に掲載されました。 
 


【用語解説】
※  脂肪由来幹細胞
間葉系幹細胞の1つで,複数の細胞に分化する能力があり,近年再生医療の分野において注目を集めている。脂肪組織由来の幹細胞であり,他の間葉系幹細胞と比較して大量の細胞が採取できること,成長因子やサイトカインなどさまざまな因子を分泌できること,培養が簡易なことなどが利点として挙げられる。

 

Scientific Reports

研究者情報:加畑 多文

 

 

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