空気中の燃焼由来粒子状物質の発生源と発生量を特定する新しい手法の開発

金沢大学の早川和一名誉教授研究員らの研究グループは,空気中の燃焼由来粒子状物質の発生源と発生量を特定するための新しい手法を開発しました。

粒子状物質(particulate matter)とは,マイクロメートル(µm)単位の大きさの微粒子です。例えば,ニュースなどで話題となっているPM2.5も,2.5 µm以下の超微小の粒子状物質のことで,世界で毎年700万人が死亡する深刻な大気汚染を引き起こしています。粒子状物質には,発がん性の高いベンツピレンをはじめとした呼吸器系や循環器系疾患の原因となる多くの有害化学物質が含まれています。肺の中に入ると肺がんやぜんそくのリスクを高めるなど,私たちの健康に影響を及ぼすことがあり,その対策は重要な課題となっています。そのために,粒子状物質の発生源と発生量を特定する必要があります。

本研究では,空気中の粒子状物質に含まれる1−ニトロピレンとピレンという2つの有害化学物質の量を測定して,発生源と発生量を特定できる新しい手法を開発しました。1−ニトロピレンは物質を高温で燃焼したときに発生しやすく,一方ピレンは低温で燃焼したときに発生しやすいことが知られています。このため,例えば,自動車のガソリン・ディーゼルエンジンなどの高温燃焼発生源が多くなれば,ピレンに対する1−ニトロピレンの割合が増加します。本研究グループは,空気中の有害化学物質の割合から,自動車あるいは石炭暖房施設/工場などの発生源ごとに,それぞれから発生した粒子状物質の量などの情報を推定できる方法を開発しました(図1)。

本研究で開発された手法は,従来の方法と比較して,2つの有害化学物質を測定するだけで,どこでも簡単に自動車あるいは石炭暖房施設/工場などの寄与率を求めることができる点で優れています。例えば,日本の金沢市と中国の北京市の粒子状物質の発生源や発生量の違いが鮮やかに分かる画期的な方法です(図2)。

今後は大気汚染が深刻な世界の国々の粒子状物質の発生源対策や健康対策に役立つことが期待されます。

本研究成果は,2020年5月5日(中央ヨーロッパ時間)に国際学術誌『Environmental Pollution』のオンライン版に掲載されました。

 

図1. 方法の概要

1-ニトロピレン,Pyr:ピレン,Pc:燃焼粒子,Po:非燃焼粒子,Ph:高温燃焼 (自動車)粒子,Pl:低温燃焼(石炭燃焼)粒子
大気中の粒子状物質に含まれる有害化学物質のそれぞれの割合を特定することにより,その粒子状物質がどこから発生したのか特定できる。1-NPが多い場合は自動車などから発生しており,Pyrが多い場合は石炭暖房施設や工場などから発生していることが分かる。

 

図2

TSP:総粒子 (= Po + Pc),Po:非燃焼粒子,Pc:燃焼粒子
金沢市と北京市のTSPとPcの2つの粒子状物質を測定した結果,北京市は金沢市と比べて石炭燃料が発生源となっている粒子状物質が多いことが分かる。

 

 

Environmental Pollution

研究者情報:早川 和一

 

 

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