人工知能を利用して慢性心不全での心臓死と突然死の予測が可能に

金沢大学大学院先進予防医学研究科の中嶋憲一特任教授らの研究グループは,慢性心不全の突然死のリスクについて,人工知能の一分野である機械学習を活用することにより,心筋交感神経イメージングによる交感神経活動の指標である123I-MIBG検査の心臓集積度(※1)が重要な要素となっていることを明らかにしました。

私たちの心臓は,体の隅々に血液を送り込むポンプの役割を果たしています。心不全とは,この重要な働きが心筋症や心筋梗塞といった疾患のために低下し,全身の血液循環が滞ってしまう状態のことです。特に先進諸国では,心不全が悪化して慢性的な心不全になる患者数が増加しています。慢性心不全は心臓ポンプ機能が低下するだけでなく,中には突然死につながることもあります。不整脈を感知して電気ショックを与え正常心拍に戻す目的で,予防的に身体内に植え込み型の装置を装着する治療法もありますが,非常に高額です。したがって,各患者が抱える心臓死や突然死のリスクの程度を正確に把握し,最適な治療を選択できるようにすることが重要な課題となっています。

本研究では,人工知能の一分野である機械学習を活用し,慢性心不全による心臓死と突然死のリスクを予測できるかについて検証しました。2年間の追跡調査のデータについて臨床的に利用できる検査結果や症状の13変数を用いて解析した結果,心筋交感神経イメージングにおける123I-MIBGの心集積が減少すると,心不全のリスクが高まることを発見しました。また,突然死にはさらに複雑な特有のパターンがあることも明らかになり,心臓死や不整脈による突然死の確率を計算できるようになりました。

本研究の成果は,心筋交感神経イメージングと機械学習の組み合わせが,重篤な心不全の予後予測に有効であることを示すものです。今後は,心不全の患者におけるポンプ機能の低下や心不全死,突然死それぞれの危険性を予測する方法を活用して最適な治療法の選択が可能となることが期待されます。

本研究成果は,2020年5月14日(中央ヨーロッパ時間)に国際学術誌『Journal of Nuclear Cardiology』のオンライン版に掲載されました。

図1

機械学習により13の入力データを用いて,重症不整脈イベント(突然死),心不全死亡,生存を予測できる。

 

図2

心不全による心臓死と重症不整脈イベントの発生を確率で予測する。心不全死と不整脈イベントについて高リスクの患者ではそれぞれ実際の発症頻度も高いが,両者が低リスクであれば心臓死と重症不整脈イベントは起こさないことが明らかになった。

 

【用語解説】

※1 123I-MIBG検査の心臓集積度
123I-MIBGは交感神経の伝達物質であるノルアドレナリンの類似物質であり,日本では世界に先駆けて1992年より用いられている。この放射性医薬品を注射すると心臓に集まるため,その集積度を画像で見ることにより心臓交感神経の活動度を知ることができる。

 

 

the Journal of Nuclear Cardiology

研究者情報:中嶋 憲一        

 

 

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