131I-MIBG投与による小児神経芽腫の放射線治療の効果を明らかに

金沢大学附属病院核医学診療科の萱野大樹講師と医薬保健研究域医学系の絹谷清剛教授らの研究グループは,131I標識3-ヨードベンジルグアニジン(131I-MIBG)(※1)と呼ばれる放射性治療薬を用いた小児神経芽腫に対する放射線治療の効果を検証しました。

神経をつくる細胞にできるがんである神経芽腫は,主に5歳以下の小児の発症率が高く小児悪性腫瘍の中では血液のがんである白血病に次いで多い腫瘍です。がんの悪性度が比較的低いケースでは標準的な手術や化学療法で対応できる場合が多い一方,悪性度が高い患児に対しては体により負担の掛かる化学療法や幹細胞移植,放射線治療を行う必要があります。しかし,これらの治療法を用いても期待される効果が得られるとは限りませんでした。そのため,小児神経芽腫の効果的な治療法の確立が重要な課題とされています。

本研究では,悪性度が高い難治性神経芽腫を患う20人の患児を対象に,放射性治療薬131I-MIBGを投与した場合の効果を検証しました。その結果,通常,難治性神経芽腫を発症した患児の5年生存率は20%以下であるところ,131I-MIBG投与を加えた治療を施した患児では5年生存率が40%以上となることが確認されました。また,化学療法や外部から全身に放射線を照射する全身照射などの治療法では,重篤な吐き気や嘔吐,腎障害,ホルモン異常などの副作用がありますが,放射性治療薬131I-MIBGを用いた放射線治療では,そのような副作用はほとんど確認されませんでした。

本研究の成果は,131I-MIBGを用いた放射線治療の有用性および安全性を示すものです。今後,臨床研究をさらに積み重ねることにより,131I-MIBGと化学療法や幹細胞治療とを組み合わせたより効果的な治療法が確立され,わが国の公的医療保険適用の対象となる治療につながることが期待されます。

本研究成果は,2020年3月26日(中央ヨーロッパ時間)に国際学術誌『Annals of Nuclear Medicine』のオンライン版に掲載されました。

131I-MIBG治療後のシンチグラム画像

全身の骨転移部位に131I-MIBGの集積を認める。131I-MIBGから放出されるβ線によって治療効果が得られる。

 

【用語解説】

※1 131I標識3-ヨードベンジルグアニジン(131I-metaiodobenzylguanidine)
 3-ヨードベンジルグアニジンは降圧剤であるグアニジンをヒントに開発されたノルアドレナリンに類似した物質である。放射線の一種であるβ線を放出する131Iを標識したものが131I標識3-ヨードベンジルグアニジンである。神経芽腫や褐色細胞腫などの腫瘍細胞に取り込まれる性質を有する。

 

 

 

Annals of Nuclear Medicine

研究者情報:萱野 大樹         

研究者情報:絹谷 清剛 

 

 

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