大腸がん転移を誘導するp53遺伝子変異を発見

金沢大学ナノ生命科学研究所/がん進展制御研究所の中山瑞穂助教,大島正伸教授,ソウル大学のキム・ソンジン教授の国際共同研究グループは,p53遺伝子の特異的な変異パターンによる大腸がんの肝転移促進機構の解明に成功しました。

がん細胞の増殖を抑制するp53遺伝子は,多くのがんで変異が認められており,その機能欠損により発がんを促進する重要な「がん抑制遺伝子(※1)」と考えられています。一方,Gain-of-Function(GOF)型変異(※2)と呼ばれる遺伝子変異によりアミノ酸配列が変化した変異型p53は,発がん促進機能を新規に獲得していることが知られています。しかし,本来のp53によるがん抑制機能の欠損とGOF型変異p53による作用がどのように相関して発がんや悪性化の促進に関わっているのかは,いまだ報告がありませんでした。

本研究グループでは,マウス腸管がん由来のオルガノイド(※3)の移植により,ヒトの大腸がん肝転移を再現するモデルを開発し,p53の機能欠損とGOF型変異の双方の組み合わせが転移巣形成を誘導することを初めて明らかにしました。

これらの知見は,変異型p53機能を抑えることでがん転移を抑制する可能性を示しており,新しい大腸がんの転移予防・治療薬の開発に活用されることが期待されます。

本研究成果は,2020年5月11日18時(日本時間)に英国科学誌『Nature Communications』に掲載されました。

 

 

図1. 肝臓に転移したがん細胞の遺伝子分析結果

大腸がん由来のオルガノイドをマウスの脾臓に移植し(上),肝臓に転移したがん細胞のp53遺伝子の状態をPCR解析した。その結果,転移したがん細胞のほとんどが野生型p53を欠損していることが明らかとなった(下)。

 

 

図2. p53変異パターンとがん転移の関係

野生型p53の欠損と,p53のGOF型変異の組み合わせは,幹細胞性の獲得と炎症/増殖に関するシグナルの亢進を誘導し,がんの転移を促進すると考えられる。


【用語解説】
※1 がん抑制遺伝子
変異により機能が損なわれることで,がんの発生や悪性化に関与する遺伝子。p53は代表的ながん抑制遺伝子として知られる。

※2 Gain-of-Function(GOF)型変異
遺伝子の変異によりアミノ酸配列の変化した分子が,正常とは異なる新しい機能を獲得するような変異を指す。がん抑制遺伝子の中で,p53だけでGOF型変異の存在が明らかにされている。

※3 オルガノイド
正常組織あるいは腫瘍組織由来の上皮細胞を,生体内と同様の腺管構造を維持したままマトリックス中で3次元培養した組織。生体内の状況に近いと考えられ,培養細胞に代わる方法として広く研究に使われる。

 

詳しくはこちら

Nature Communications

研究者情報:中山 瑞穂

研究者情報:大島 正伸

 

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