PMLボディによる遺伝子制御のメカニズムの一端を解明

金沢大学ナノ生命科学研究所の宮成悠介准教授と,基礎生物学研究所,生命創成探究センター,九州大学,長崎大学などの共同研究グループは,PMLボディ(※1)による遺伝子制御メカニズムの一端を明らかにすることに成功しました。

PMLボディは,がん抑制因子であるPMLタンパク質が凝集してできた構造体で,ゲノムDNAと一緒に核内に存在します。これまでの研究から,PMLボディは,がん化,老化,抗ウイルス応答などのさまざまな生命現象に関与することが知られている一方,ゲノムDNAと共存しているにもかかわらず,ゲノムDNAへの影響,特に遺伝子発現に関する機能は謎に包まれていました。その理由は,PMLボディが不溶性の構造体であり,既存の解析技術ではその機能を明らかにすることが困難であったためです。

本研究グループは,ALaP法(※2)という新規技術を開発することにより,PMLボディがその周辺に存在するゲノムDNAにどのような影響を与えているかを解析することに成功し,PMLボディがY染色体上の遺伝子群を制御していることを明らかにしました。さらに,PMLボディがDNAメチル化酵素DNMT3Aを制御することによって,Y染色体の遺伝子を操っていることを見いだしました。

本研究は,これまで謎に包まれていたPMLボディの機能の一部を明らかにしたもので,がん化,老化,抗ウイルス応答などのPMLボディが関与するさまざまな生命現象の理解を深めることにつながると期待されます。

本研究成果は,2020年4月29日(米国東部標準時間)に専門誌『Molecular Cell』のオンライン版に掲載されました。

 

 

図1. PMLボディは細胞の核内にゲノムDNAと一緒に存在する球状の構造体

 

 

 

図2. PMLボディによる遺伝子制御

PMLボディはY染色体の遺伝子と寄り添うように存在し,遺伝子発現を制御している。特に,DNAメチル化酵素DNMT3Aを排除することにより,Y染色体の遺伝子群が正常に働くように機能している。
 


【用語解説】
※1 PMLボディ
細胞核内に存在するタンパク質の集合体。PMLタンパク質などのさまざまなタンパク質が凝集することによって形成されている。

※2 ALaP法 (APEX-mediated chromatin Labeling and Purification)
通常,核内のタンパク質の機能解析には抗体を使ったクロマチン免疫沈降法が用いられるが,PMLボディは不溶性であるために,そのような従来法は適していなかった。そこで,PMLの周辺をAPEXというペルオキシダーゼ酵素を用いることによってラベルすることで,PMLボディと相互作用するゲノムDNA領域を同定することができるALaP法を開発した。

 

詳しくはこちら

Molecular Cell

研究者情報:宮成 悠介

 

 

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