宇宙の加速膨張を熱力学的な観点から説明するホログラフィー宇宙論モデルを提唱

金沢大学理工研究域機械工学系の小松信義准教授は,宇宙の加速膨張などを熱力学的な観点から説明するホログラフィー宇宙論モデルを新たに提案しました。

宇宙の誕生や進化,加速的に膨張する宇宙の最終的な姿への問いは,研究者だけでなく,物理学や天文学に興味を持つ多くの人々の心を捉えてきました。現在,宇宙の進化や加速膨張を説明できる宇宙論モデルとして,ダークエネルギーを仮定する標準宇宙論モデル(※1)があります。しかし,ダークエネルギーの起源や,宇宙に存在するダークエネルギーの量などについては,標準宇宙論モデルで理論的に説明することができません。そのため,近年は,熱・統計力学的な観点から宇宙の進化や加速膨張を説明できる新しい宇宙論モデルの研究が進められています。

本研究では,ホログラフィー等分配則(※2)に基づく加速膨張モデルを提案し,宇宙の熱力学的な進化(エントロピーの時間変化)を検討しました。その結果,ダークエネルギーの量は,熱力学的な条件(エントロピー最大化条件)で制約されているという新しい解釈ができることを明らかにしました。

今回提案したモデルは,宇宙の進化や加速膨張における複数の重要な問題に対して簡潔な解釈を与えることができるだけではなく,より包括的な枠組みの中で宇宙の加速膨張を説明できます。さらに,本モデルは,エントロピーの揺らぎがダークエネルギーと相関があることを示唆している可能性もあり,今後,新たな宇宙論の地平を切り開くことが期待されます。

本研究成果は,2019年12月30日(米国東部標準時間)に国際学術誌『Physical Review D』のオンライン版に掲載されました。
 

 

 

【用語解説】
※1 標準宇宙論モデル
ラムダ・コールド・ダークマター・モデルのこと。宇宙加速膨張の要因となる宇宙項ラムダと冷たい暗黒物質(コールド・ダークマター)を仮定した宇宙論モデル。宇宙項ラムダは,ダークエネルギーと呼ばれることもある。

※2 ホログラフィー等分配則
ブラックホールや宇宙の3次元空間内の全情報が,その2次元表面上(地平面上)に蓄積されているとする仮説をホログラフィー原理と呼ぶ。ホログラフィー等分配則とは,ホログラフィー原理のアイデアを拡張した「宇宙膨張に関する仮説」のこと。ホログラフィー等分配則では,宇宙膨張が宇宙の3次元空間内の自由度と2次元地平面上の自由度に依存すると考える。

 

Physical Review D

研究者情報:小松 信義

 

 

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