声に対する脳活動は子どもの発達や知能を予測する
-6分程度の脳磁計測定から発達調査が可能に-

掲載日:2020-2-26
研究

金沢大学子どものこころの発達研究センターのアンキョンミン特任助教,人間社会研究域学校教育系の吉村優子准教授,医薬保健研究域医学系精神行動科学の菊知充教授らの研究グループは,産学官連携のプロジェクトで開発した「幼児用脳磁計」を活用し,脳の大脳生理学的反応(※1)から子どもの典型的な発達における脳発達と知能が予測できる可能性を示しました。

子どもの成長には,脳神経的な発達や学習の基盤となる知的能力が深く関わっており,近年の脳科学分野においては,子どもの脳発達と知能の研究が注目されています。これまでの行動研究から,外界からの刺激に対する感覚処理が優れているほど知能が高いという報告はありましたが,脳科学研究ではまだ証明されていませんでした。

本研究では,3歳から8歳の定型発達の男児49名を対象に,子どもに優しい脳イメージング装置である幼児用MEGを用いて「ね」という音声刺激に対する脳活動を6分程度測定し,音への感覚処理に関わる脳活動から子どもの発達や知能の予測可能性を調べました。その結果,子どもの音声刺激に対する左脳の脳活動の大きさは子どもの月齢と高い相関があり,右脳の脳活動の大きさは,子どもの流動性知能(※2)と高い相関があることが明らかになりました。

本研究は,子どもの脳神経および認知的な発達を,6分程度の脳磁計測によって大脳生理学的反応から予測できる可能性を示しています。本手法を用いることで,子どもの発達の程度や特徴について客観的に捉えることが可能となり,子どもの発達および認知的な程度に合わせた学習支援や教育により早くつながることが期待されます。

本研究成果は,2020年2月23日9時(米国東海岸標準時間)に米国科学誌『Human Brain Mapping』のオンライン版に掲載されました。


 

図1. 本研究で使われた音声刺激の波形と幼児用MEGでの計測イメージ

6分程度の音声刺激を聞きながら,子どもに優しい幼児用MEGで脳反応を計測。

 

図2. 音声刺激に対する大脳皮質反応

左脳の聴覚野の脳反応の大きさは月齢が高いほど大きく,右脳の聴覚野の脳反応が大きいほど知能が高い。

 

 

【用語解説】
※1 大脳生理学的反応
人間の行動を支配する大脳そのものに観察される反応。

※2 流動性知能
新しい場面への適応に必要な能力を指し,具体的には,推論する力・思考力・暗記力・計算力などとして挙げられる知能。

 

 

詳しくはこちら

Human Brain Mapping

研究者情報:アン キョンミン

研究者情報:吉村 優子

研究者情報:菊知 充
 

 

 

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