腫瘍摘出手術において隠れた血管を感知するグリッパーを開発

金沢大学設計製造技術研究所の米山猛教授,理工研究域フロンティア工学系の渡辺哲陽教授および医薬保健研究域医学系の中田光俊教授らの研究グループは,工学と医学の融合研究によって腫瘍内にある血管を感知できるグリッパーを開発しました。

さまざまな病気の治療で行われている内視鏡を用いた手術は,患者の身体的負担が少ないという大きなメリットがある一方,手術空間が狭く術者の視界が限られるという問題があります。特に,神経内視鏡で脳を手術する場合などは,血管を傷付けると視野が血液で覆われるため,止血が必須となり,そのための時間や労力が追加で必要になります。内視鏡で観察できる表出した血管は傷付けないことが可能ですが,切除すべき腫瘍の内部にある血管は検出できない場合があります。そのため,視覚的に検出が難しい血管を検出する技術が求められています。

本研究では,腫瘍モデルを用いて,腫瘍の中を通る細い動脈を検出するためのグリッパーを開発しました。腫瘍には柔らかいものから硬いものまであるため,いずれにも対応できる必要があります。柔らかい腫瘍としては10%の食塩を混ぜ込んだウレタンゲルを,硬い腫瘍としてはシリコンゴムを用いて,それぞれ3×3×10ミリメートル(mm)の腫瘍を模したモデルを作成しました。その中央に内径が0.5 mm で膜厚が 0.05 mm のシリコンチューブを通して血管モデルとし,毎分70回の脈動を持つように水を流して動脈を模しました。直径3 mmのプローブの先端に力覚センサーを取り付けた小さなグリッパーで腫瘍モデルを挟み,その角度を一定速度で狭めていくと,力覚センサーがある角度に達すると脈動を検知することが分かりました。このグリッパーは,柔らかい腫瘍モデル,硬い腫瘍モデル共に脈動を検知しましたが,検知できる挟み角度は異なることが明らかとなりました。

本研究において開発された腫瘍内血管感知グリッパーを現在広く普及している手術支援ロボットに装着し実際の手術現場での活用されることを目指し,今後はさまざまな条件下での実証を行っていく予定です。将来的には,出血を防ぐ安全な脳腫瘍摘出ロボットの開発につながることが期待されます。

本研究成果は,2019年11月25日(中央ヨーロッパ時間)に国際学術誌『Sensors』のオンライン版に掲載されました。


 

図. 力覚センサーを取り付けたグリッパーによる腫瘍内血管の検出

腫瘍内部にある血管は,グリッパーが腫瘍を握ったときの周期力変動として検出される。
 

 

 

Sensors

研究者情報:米山 猛

研究者情報:渡辺 哲陽

研究者情報:中田 光俊

 

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