中枢神経系転移での分子標的薬耐性のメカニズムを解明
-他の分子標的薬併用で耐性を克服-

金沢大学がん進展制御研究所/ナノ生命科学研究所の矢野聖二教授,新井祥子特任助手と医薬保健研究域医学系の中田光俊教授らの共同研究チームは,中枢神経系に転移(※1)したがん細胞がアンフィレグリン(※2)という増殖因子を出して分子標的薬(※3)の治療から逃れることを初めて明らかにしました。

最近の分子標的薬は,脳や髄腔などの中枢神経系にも到達してがんを抑制しますが,中枢神経系に転移したがんは他の臓器の中に転移したがんと比べて耐性化しやすいことが問題となっています。

本研究では,中枢神経系転移を起こしやすいALK肺がんのモデルを用いて,髄腔に転移したがんが自ら増殖因子を作ることにより分子標的薬に耐性となることを発見しました。また,この耐性は,増殖因子の働きを抑える別の分子標的薬を併用することで克服できることを明らかにしました。

本研究成果は,中枢神経系に転移したがんの治療成績向上につながるものと期待されます。本研究は,慶應義塾大学,がん研究会,兵庫県立がんセンター,長崎大学,大阪国際がんセンター,神戸市立医療センター中央市民病院,華南理工大学,島津製作所との共同研究により行われました。

本研究成果は,2020年1月21日に米国科学誌『Journal of Thoracic Oncology』のオンライン版に掲載されました。


 

図1. 中枢神経系転移とそのMRI画像

 

 

 

図2.

ALK阻害薬であるアレクチニブに耐性となったALK肺がん耐性株では,マイクロRNA 449aの発現が低下し,アンフィレグリンの発現が上昇する結果,上皮成長因子受容体(EGFR)を活性化してアレクチニブに耐性化

 

 

図3. EGFR阻害薬の併用で髄膜がん腫症モデルのアレクチニブ耐性を克服

 


【用語解説】
※1 中枢神経系転移
大脳や小脳の中に転移病巣ができる脳転移と,脳や脊髄を取り囲んでいる脳脊髄髄腔にがん細胞がばらまかれて広がる(播種する)髄膜がん腫症がある。

※2 アンフィレグリン
252個のアミノ酸から成るタンパク質で,EGFRに結合することで活性化しがん細胞の増殖を促進する作用などが知られている。

※3 分子標的薬
がんの増殖や生存に重要な役割を果している分子にピンポイントで作用する薬。2001年に白血病に対するイマチニブ(商品名グリベック)と乳がんに対するトラスツズマブ(商品名ハーセプチン)が認可されたのを皮切りに,日本では現在40 種類以上の分子標的薬ががんに対して認可されている。

 

 

詳しくはこちら

Journal of Thoracic Oncology

研究者情報:矢野 聖二

研究者情報:新井 祥子

 

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