有機薄膜太陽電池の品質劣化の仕組みを解明

金沢大学ナノマテリアル研究所の辛川誠准教授と理工研究域物質化学系の髙橋光信教授らの研究グループは,有機薄膜太陽電池の光電変換効率や耐久性といった特性の劣化原因と劣化プロセスを解明しました。

太陽光発電は,身近な再生可能エネルギーの1つである太陽光を活用した発電方式です。現在主流となっているシリコンを用いた太陽電池は製造コストが高いのに対し,有機薄膜太陽電池は2種類の有機半導体分子の相互作用によって発電しており,製造コストが安価です。さらに,着色が可能で,デザイン性を持った設置が可能であるなどの特徴を有しており,シリコン製太陽電池に代わる次世代太陽電池として期待されています。しかし,現在の有機薄膜太陽電池は,寿命が短いという難点があり,太陽光にさらされることによる性能劣化の詳細な原因究明が,普及に向けての課題の1つとなっていました。

本研究では,インピーダンス分光法(※1)と可視・紫外分光法(※2)を用いて有機薄膜内部の材料変化を解析しました。その結果,性能の劣化は有機半導体層を構成する有機半導体分子に積み重なったダメージに起因していていることを突き止めました。また,有機半導体分子が紫外線にさらされることによって有機半導体層の電気抵抗が増加することで,電流効率に影響を及ぼすことを明らかにしました。

性能劣化のプロセスを解明した本研究は,有機薄膜太陽電池の耐久性向上に向けた重要な一歩と位置付けられます。今後は,より変換効率に優れ多様な形状を持つ有機薄膜太陽電池の開発が進み,太陽光発電の新たな可能性やさらなる利用促進につながることが期待されます。

本研究成果は,2019年9月13日(米国東部標準時間)に国際学術誌『Organic Electronics』のオンライン版に掲載されました。


 

図.

連続光照射駆動後の発電層材料の光変化および分子構造

 

 


【用語解説】
※1 インピーダンス分光法
有機半導体に交流電流を流し,その抵抗の実数成分と虚数成分を交流周波数の関数として測定し,有機半導体中の電荷の挙動に関する情報を得る実験手法。

※2 可視・紫外分光法
紫外領域と可視領域の光の領域を用いて,レンズ・塗料・蒸着面などの固体試料では,透過スペクトルや反射スペクトルを測定し,各種特性の定量分析・評価を行う手法。

 

Organic Electronics

研究者情報:辛川 誠

研究者情報:髙橋 光信

 

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