電気分極変化を利用した磁気的性質の制御に成功

金沢大学理工研究域数物科学系の小幡正雄助教と小田竜樹教授らの研究グループは,金属層の磁気的性質を,隣接する誘電体の電気分極 (※1) 方向の変化を活用することで制御することに成功しました。

物質中の電子は,電荷だけでなくスピンと呼ばれる磁石の性質を持っています。スピンの性質を用いた電子デバイスはスピントロニクスデバイスと呼ばれ,スピンを用いることで不揮発性(※2) を持つメモリデバイスが実現できることからデバイスの低消費電力化につながるなど,従来のエレクトロニクスデバイスよりも優れた機能を持つと期待されています。スピントロニクスデバイスでは,磁石(スピン)の磁気特性を制御する必要がありますが,不揮発的な制御が可能となればさらなる応用が期待されます。そこで,本研究グループは,強磁性(※3) 薄膜に電気分極を持った誘電体を接合し,電気分極変化によって磁気特性を制御できないかと考えました。

本研究では,まずコンピューターシミュレーションと実験計測によって,白金コバルト合金中の電子の感じる静電ポテンシャルが,隣接する酸化亜鉛の電気分極方向によって大きく変化することを見いだし,白金コバルト合金の磁気的性質が分極方向に強く依存していることを明らかにしました (図参照)。この結果に基づき,酸化亜鉛の電気分極変化によって,白金コバルト合金の磁気異方性(※4)を不揮発的に制御することに成功しました。

本研究により,磁性層の磁気特性の制御方法の新しい可能性を提案することができました。本制御手法では,隣接する酸化亜鉛の電気分極方向と白金コバルト合金の磁気分極方向の2つの方向を使用しています。単純な構造ながら複数の組み合わせ(情報)が可能となるため,新しいメカニズムを持つ電子デバイスの開発にもつながることが期待されます。

本研究成果は,2019年8月19日(米国東部標準時間)に国際学術誌『Physical Review B』のオンライン版に掲載されました。


 

図. 磁気トンネル接合の概略図

強誘電物質(酸化マグネシウム亜鉛(MgZnO))の層が,磁性金属層(コバルト(Co),白金コバルト合金(PtCo))に挟まれた構造となっている。左下図は,電気分極と磁気分極方向によって変化する電気抵抗を,右図はそれぞれの電気分極の方向を示す。

 

 


【用語解説】
※1 電気分極
対となる正と負の電荷が分離し,正と負の電荷分布に偏りがある状態。

※2 不揮発性
外部からの働きかけがなくても,そのものがなくなったりしないこと。

※3 強磁性
物質がS極とN極に分離している磁気分極した性質。

※4 磁気異方性
磁石のS極とN極の向き易い向きが方向によって異なること。

 

 

Physical Review B

研究者情報:小幡 正雄

研究者情報:小田 竜樹

 

Pocket
LINEで送る