1電子を操るメタルフリー触媒で合成後期における医薬品・天然物の変換を実現

金沢大学医薬保健研究域薬学系の大宮寛久教授,長尾一哲博士研究員,大学院医薬保健学総合研究科創薬科学専攻博士前期課程1年の石井卓也,医薬保健学域薬学類4年の掛布優樹の研究グループは,高価な金属(メタル)触媒ではなく,1電子を操る有機分子触媒(※1)を用いることで,入手容易なアルデヒド(※2)とカルボン酸(※3)から,医薬品や農薬,天然物などに見られる重要な有機化合物であるケトン(※4)をつくりだすことに成功しました。

従来の手法ではアルデヒドからケトンを合成するには,金属を触媒として用いる必要があります。しかし,金属触媒は高価なものが多く,さらに生成物内に金属が残留することが問題となります。

本研究では,単純な元素である炭素・窒素・硫黄・水素からなるN-ヘテロ環カルベン(※5)を有機分子触媒として用いて,アルデヒドとカルボン酸からケトンをつくりだすことに成功しました。

また,本手法によって,医薬品や天然物に含まれるカルボン酸をケトンに変換することができました。つまり,医薬品・天然物の合成プロセスの後期において利用可能な強力な官能基化手法であり,創薬研究の加速につながると期待されます。

本研究成果は,2019年2月20日(米国東部標準時間)にアメリカ化学会誌『Journal of the American Chemical Society』のオンライン版に掲載されました。
 

 

 

 

図1. 研究概要
 

 

 

 

図2. 研究概要

従来のN-ヘテロ環カルベンを触媒として用いる手法では,2電子移動を伴う炭素-炭素結合であり,立体障害に弱く,電子的に活性化されている求電子剤に対してのみ反応する。本研究による手法では,1電子移動を起こした後に, 炭素-炭素結合生成するプロセスにおいて高反応性のラジカルを用いる新しい反応プロセスを見いだした。
 

 

 

 

【用語解説】
※1 有機分子触媒
化学反応の際にそれ自身は変化せず,反応を進みやすくする触媒のうち,金属元素を含まず,炭素・水素・酸素・窒素・硫黄などの元素からなる,触媒作用を有する低分子化合物。

※2 アルデヒド
水素と結合した炭素と酸素の間に二重結合を持つカルボニル。天然などに見られ,容易に入手可能な有機化合物。

※3 カルボン酸
カルボキシル基(-COOH)を有する有機化合物。

※4 ケトン
炭素と酸素の間に二重結合を持つカルボニル。身近な例として除光液として用いられるアセトンが挙げられる。

※5 カルベン
炭素周りに6電子しか持たない二価化学種。

 

詳しくはこちら

Journal of the American Chemical Society

・ 研究者情報:大宮 寛久

 

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