2つのカルボニルを見分けてつなげる触媒の開発 ~「1,2-ジオール」の選択的合成が可能に~

掲載日:2019-3-1
研究

金沢大学医薬保健研究域薬学系の大宮寛久教授,長尾一哲博士研究員,大学院医薬保健学総合研究科創薬科学専攻博士前期課程1年の竹田光孝,医薬保健学域創薬科学類4年の三井惇央らの研究グループは,アルデヒドとケトンという入手容易な2つのカルボニル(※1)を出発原料とし,この2つのカルボニルから,医薬品,農薬,天然物において重要な分子骨格である「1,2-ジオール(※2)」を選択的につくりだすことに成功しました。

2つのカルボニルを見分けてつなぎ合わせる,新しい触媒(※3, ※4)を見いだしたことが成功の鍵といえます。本研究で用いた手法では,異なる2つのカルボニル(A,B)から1種類の1,2-ジオール(AB)のみが選択的に得られます。一方,従来の手法では,2つの異なるカルボニル(A,B)を見分けることは困難であり,3種類の1,2-ジオール(AB,AA,BB)が得られてしまい,分離する作業が必要になります。

本研究成果は,1,2-ジオールを選択的に合成するための新しい戦略を提供したといえ,複雑な構造を持つ医薬品,農薬,天然物の迅速な合成につながることが期待されます。

本研究成果は,2019年1月17日(米国東部標準時間)にアメリカ化学会誌『Journal of the American Chemical Society』のオンライン版に掲載されました。また,2019年2月27日発行の本誌の表紙(Supplementary Cover)に採用されています。
 

 

 

 

図. 研究概要

 

 

 

【用語解説】
※1 カルボニル
炭素と酸素の間に二重結合をもつ官能基。

※2 1,2-ジオール
2つの水酸基が,隣接した2つの異なる炭素に結合している。

※3 銅
原子番号 29 の元素(Cu)。

※4 触媒
化学反応の際,それ自身は変化せず,反応を進みやすくする物質。

 

詳しくはこちら

Journal of the American Chemical Society

・ 研究者情報:大宮 寛久

 

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