単極子を制御できる新たな物質 -高温で量子スピンアイスとして振る舞う物質を理論設計・解析-

(C)理化学研究所

金沢大学ナノマテリアル研究所の石井史之准教授,理化学研究所創発物性科学研究センター量子物性理論研究チームの小野田繁樹専任研究員の共同研究グループは,結晶構造の一つであるスピネル型構造(※1)を持つイリジウム酸化物の薄膜を基板で制御することにより,スピンのN極とS極が分化した単極子(※2)が粒子のように振る舞う「U(1)量子スピン液体」という状態が,従来よりも高温で出現しうることを理論的に発見しました。

単極子流は磁化の変化を伴うため,電流やスピン流を流さなくても,磁性体の磁化を容易にかつ効率良く変化させられると考えられています。しかし,磁性希土類パイロクロア型酸化物でこの現象が現れると期待されているのは,0.1K(約-273.05℃)よりもさらに極低温です。そこで,0.1Kよりもできるだけ高温でこの現象が生じる物質の開発が求められていました。

本共同研究グループは,イリジウム酸化物LiIr2O4(Li:リチウム,Ir:イリジウム,O:酸素)からLiイオンが脱離した「Ir2O4」という物質に着目し,Ir2O4の電子状態を多角的に理論解析しました。その結果, Ir2O4ではU(1)量子スピン液体の発現を,理論的には0.1Kよりも高温の10K(約-263.15℃)程度まで上げられることが分かりました。

本研究成果は,電流を流すことなく,単極子流によって磁化を効率良く制御する次世代の低消費電力デバイスの開発につながると期待できます。

本研究成果は,2月12日(米国東部標準時間)に米国科学雑誌「Physical Review Letters」のオンライン版に掲載されました。

 

 

図1. (C)理化学研究所

単極子が量子スピンアイス物質の左端から右端へ流れることで,磁化が変化する。

 

 

図2. (C)理化学研究所

Ir2O4のバルク結晶(左)とMgO(Mg:マグネシウム)基板上薄膜での磁気構造(中央)とU(1)量子スピン液体相での単極子のイメージ(右)

 

 

 

 

【用語解説】
※1 スピネル型構造
立方晶系に属する結晶構造の一つで,一般式AB2X4となる金属元素の酸化物,硫化物に見られる。

※2 単極子
磁性体における単極子とは,磁化のN極やS極の性質を持つ粒子のことをいう。

 

詳しくはこちら

Physical Review Letters

・ 研究者情報:石井 史之

 

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