腸内細菌が産生するD型アミノ酸の新たな腎臓保護効果を発見
~腎臓と腸管・腸内細菌叢をつなぐ新たな全身ネットワーク~

金沢大学医薬保健研究域医学系の和田隆志教授と大学院医薬保健学総合研究科医学博士課程の中出祐介さんは,早稲田大学理工学術院の服部正平教授,国立研究開発法人理化学研究所の須田亙研究員,岡山大学大学院環境生命科学研究科の森田英利教授,九州大学薬学研究院の浜瀬健司教授,北里大学薬学部の本間浩教授の研究グループとの共同研究により,生命現象のさまざまな局面において重要な生理機能を有する可能性のあるD-アミノ酸が,腎臓と腸内細菌において産生されるとともに,腎臓保護効果を示す仕組みを世界で初めて明らかにしました。

近年,腸内細菌叢(※1)がヒトの健康と関係し,さまざまな病気で変化することが報告され注目されています。しかしながら,その詳細な調節の仕組みに関しては不明な点が多く,未知の領域となっています。本研究により,腎臓が障害を受けた際に腸内細菌叢が変化する腎・腸連関があることと共に,腸内細菌からD-アミノ酸が産生され,血液を介して腎臓を保護する仕組みを明らかにしました。さらにD-アミノ酸は,長らくその産生場所や機能などが不明でした。本研究で,腎臓病に伴い腸内細菌叢が変化すること,少なくとも腎臓病に関連するD-アミノ酸の主たる産生部位は腸内細菌叢であること,およびD-アミノ酸を介して腎臓保護効果を示すことなどを明らかにしたことにより,これまでの謎の解明に新たな解釈を与える可能性もあります。

本研究で得られた知見は将来,腎臓病で発症するさまざまな全身疾患の成り立ちの理解を深めることにつながるとともに,D-アミノ酸を標的とした新規の腎臓病に対するバイオマーカーや治療薬開発へ活用されることが期待されます。

本研究成果は,2018年10月18日(米国東部標準時間)に米国科学誌「The Journal of Clinical Investigation Insight」のオンライン版に掲載されました。また,新規の急性腎障害診断バイオマーカー候補として特許出願も行いました。

 

図.

腎障害に反応する腸内細菌が存在し,この腸内細菌は腎保護効果のあるD-アミノ酸を産生し,血液を介することで腸から遠くに離れた腎臓へ影響を及ぼす。
 

 

【用語解説】
※1 腸内細菌叢
腸内に生息するさまざまな細菌が一つずつではなく,集団で生態系を作りお互いに作用したり,生体から影響を受けたり,生体へ影響を及ぼしたりする細菌の集団。健常人では,保有している菌や菌が持つ作用などはほぼ一定と考えられている。他方,病気になった場合には腸内細菌叢が変化し,生体へさまざまな影響を及ぼしていると考えられている。
 

 

詳しくはこちら

The Journal of Clinical Investigation Insight

・ 研究者情報:和田 隆志

 

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