統合失調症の神経ネットワークに含まれる複数の大脳皮質領域に共通する神経細胞の変化を解明

金沢大学医薬保健研究域医学系 精神行動科学の橋本隆紀准教授,坪本真大学院生らの研究グループは,米国ピッツバーグ大学精神医学部門(代表者:David A. Lewis教授)と共同で,ヒトの死後脳を用いた統合失調症(※1)に見られる神経細胞の変化に関する研究を行いました。

その結果,統合失調症患者では,複数の大脳皮質(※2)の部位において,情報処理の効率化を担うパルブアルブミン細胞と情報の選択統合をコントロールするソマトスタチン細胞の変化が共通して認められることを世界で初めて報告しました。

これらの領域は認知機能のための神経ネットワークを作っており,今回認められた変化は,神経ネットワークにおける情報処理を低下させ,多くの患者で自立や社会復帰への妨げとなっている認知機能障害に関与していると考えられます。

本研究成果により得られた知見は,統合失調症の認知機能障害に対し,特定の細胞を標的とした新たな治療法の開発につながるものと期待されます。

本研究成果は, 9月24日(英国時間)に英国の神経科学専門雑誌「Cerebral Cortex」のオンライン版に掲載されました。

 

 

図.統合失調症の作業記憶神経ネットワークにおける遺伝子発現の変化

作業記憶神経ネットワークに含まれる大脳皮質の4領域それぞれで,抑制性の神経伝達物質を含有する神経細胞(GABA細胞)に特徴的に発現する8つの分子の発現量を統合失調症と健常者の比として示した。統合失調症で増加している場合はグラフで1.00よりも上向き,減少している場合は下向きの変化として表される。パルブアルブミン細胞,ソマトスタチン細胞中心の変化が共通しており,作業記憶障害に結び付いていると考えられる。

 

【用語解説】
※1 統合失調症
幻覚(幻聴)や妄想,意欲低下,社会的引きこもり,認知機能(注意や思考)の障害などを主症状とする疾患。約100人に1人で発症するが,その原因はまだはっきりと分かっていない。

※2 大脳皮質
大脳の表面を覆う部分の名称。脳溝(脳のしわ)や細部の構造などにより複数の部位に分けることができ,思考,運動,知覚,言語など部位ごとに異なる機能を持つ。
 

 

詳しくはこちら

Cerebral Cortex

・ 研究者情報:橋本 隆紀

 

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