世界初! 自閉スペクトラム症の不器用さに関わる脳の特徴を可視化 -脳の特徴を用いて新たなバイオマーカー -

掲載日:2018-8-17
研究

大阪大学大学院連合小児発達学研究科金沢校の大学院生アンキョンミン,医薬保健研究域医学系の三邉義雄教授,金沢大学子どものこころの発達研究センターの菊知充教授らの研究グループは,産学官連携のプロジェクトで開発した「幼児用脳磁計(Magnetoencephalography: MEG)」を活用し,自閉スペクトラム症児(※1)の運動の不器用さに対する特異的な脳活動を捉えることに成功し,行動的な反応時間と,脳の大脳生理学的反応(※2)に異常があることを示しました。

健常な大人が運動を実行する時,脳の運動野からガンマ波(※3)が出現することが知られていました。また,ガンマ波が脳神経の興奮と抑制のバランスに非常に関係があると考えられてきました。

本研究では,5歳から7歳の自閉スペクトラム症児14名,健常児15名を対象に視覚的ターゲットに対してボタンを押してもらい,運動実行によって起こる脳活動を調べました。その結果,自閉スペクトラム症児は健常児に比べて,運動実行の反応時間が160ms遅いとともに,ガンマ波の周波数が平均7Hz低く,パワーが平均72.1%小さいことを発見しました。さらに,運動の反応時間と大脳生理的なガンマ波の特徴を利用すれば,自閉スペクトラム症を86.2%の精度で診断できることを発見しました。

本研究成果は,2018年8月14日(火)午前2時(日本時間)に米国科学雑誌『The Journal of Neuroscience』のオンライン版に掲載されました。
 

 

図1.

子どもの被検者たちが楽しく集中できるように開発した,ボタン押し課題。犬が走りながら果物を獲得するゲームで,果物が現れたら,できるだけ早くボタンを押すゲーム。
 

 

図2.

視覚刺激に合わせてボタンの押した反応時間が自閉スペクトラム症児が健常児より160ms遅いことを示している。

 

図3.

自閉スペクトラム症児は健常児に比べて脳のガンマ反応が72.1%少ないことを示している。

 

 

【用語解説】
※1 自閉スペクトラム症
対人関係の障害,コミュニケーションの障害,限局した興味・活動の3つの特徴を持つ脳の発達障害。

※2 大脳生理学的反応
人間の行動を支配する大脳そのものに観察される反応。

※3 ガンマ波
ガンマ波は脳の発する振動パターンの1つで,知覚や意識に関連して出現する。脳の興奮と抑制のバランスを反映している。

 

詳しくはこちら [PDF]

The Journal of Neuroscience

・ 研究者情報:三邉 義雄

・ 研究者情報:菊知 充

 

FacebookPAGE TOP