B型肝炎ウイルス複製の鋳型となるDNAの形成に関わる酵素を発見

金沢大学医薬保健研究域医学系分子遺伝学の喜多村晃一講師は,国立感染症研究所,長崎大学の研究グループと共同で,ヒトの細胞が持つ酵素FEN1(フラップエンドヌクレアーゼ1)(※1)がB型肝炎ウイルス(※2)の複製に必須であるウイルスDNA(cccDNA(※3))の形成に関わることを世界で初めて明らかにしました。

B型肝炎ウイルスの持続感染者(※4)は日本国内で110〜140万人と推定されています。また,B型肝炎ウイルスの持続感染は,肝硬変,肝がんへと進行していくことが懸念されます。しかし,B型肝炎ウイルスのcccDNAは持続感染者からの排除が困難とされているだけでなく,その形成・維持の仕組みはほとんど分かっていませんでした。

ヒトの肝細胞でcccDNA形成に関与している酵素を発見した本研究は,将来の抗ウイルス薬開発につながる新たな知見として期待されます。

本研究成果は,2018年6月21日午後2時(米国東部標準時間)に米国科学雑誌「PLOS Pathogens」に掲載されました。

 

図 B型肝炎ウイルス複製の模式図とFEN1の関与

感染し細胞内に侵入したウイルスのDNAは核内に移行し,前駆体DNA(rcDNA)からcccDNAが作られる。その過程のフラップ構造除去にFEN1が関与していることが本研究で示された。

 

 

【用語解説】
※1 FEN1
DNAフラップ構造を切断する酵素(エンドヌクレアーゼ)。通常,細胞内ではDNA複製やDNA修復時に機能しているが,B型肝炎ウイルスはこの仕組みを利用していることが本研究により示された。

※2 B型肝炎ウイルス
主に血液や体液を介して感染するDNAウイルス。C型肝炎ウイルスと共に肝臓がんの主要な原因とされる。世界保健機関(WHO)の推計では,B型肝炎ウイルス感染者は世界中で20億人,そのうちB型肝炎ウイルス持続感染者は2.57億人,さらに年間50〜70万人がB型肝炎ウイルス関連疾患で死亡していると報告されている。

※3 cccDNA
感染後の細胞核内で前駆体DNA(rcDNA)より形成されるB型肝炎ウイルスに特徴的なゲノムDNA。ウイルスゲノムRNAや種々のウイルスタンパク質を作るmRNA産生の鋳型となる。cccDNAが長期に存在する持続感染が成立してしまうと,ワクチンや既存の抗ウイルス薬では除去が困難である。

※4 持続感染
B型肝炎ウイルスの感染は一過性感染と持続感染に分けられ, 6カ月以上感染が続く場合を持続感染と呼ぶ。免疫機能が十分に発達していない乳幼児期に感染するとウイルスを排除できず,持続感染になる場合がある。

 

詳しくはこちら [PDF]

PLOS Pathogens

・ 研究者情報:喜多村 晃一

 

Pocket
LINEで送る