四肢の形成の決め手となるシグナルを発見!

金沢大学がん進展制御研究所のニコラス・バーカーリサーチプロフェッサー(招へい型)らは,シンガポール国立大学,イスタンブール大学の研究グループとの共同研究により,四肢の異常を引き起こす原因となる遺伝子を特定しました。

四肢の発生は,脊椎動物の体の形づくりの基本となる中心周辺軸,前後軸,背腹軸を決定する3次元的シグナル機構(※1)によって制御されています。胎児期にその過程に異常が生じると,肺の形成不全を伴い,四肢を全て失ってしまうテトラ・アメリア症候群(TETAMS)という遺伝病となることが知られていましたが,その原因は不明でした。

今回,本研究グループは,5つの家族で11人にわたり重度の四肢形成不全の症状を示す患者を調べることにより,TETAMSを引き起こす劣勢のRSPO2(※2)遺伝子変異を突き止めました。さらに,これらの症状の原因となる発生過程における四肢の形成には,細胞の分化運命の決定を調整するWNT(※3)シグナル-受容体経路に新たな経路が存在する可能性を明らかにしました。

今後,本知見が再生医療への応用やWNTシグナルに関連するがん発生の理解につながると期待されます。

本研究成果は,2018年5月16日(米国東海岸標準時間)に米国科学誌「Nature」のオンライン版に掲載されました。

 

これまでRSPO2がロイシンリッチリピートを持つGタンパク質共役型受容体(LGR)(※4)と結びつきWNT-シグナル受容体を活性化すると思われていたが(左),本研究によりLGRに代わる未知の受容体が存在する可能性が示された(右)。

 

【用語解説】

※1 3次元的シグナル機構

体には中心周辺軸,前後軸,背腹軸の3つの軸があり,体が作られる過程においては,それぞれの軸に特徴的なシグナルが存在することが知られている。前後軸は,頭部が前方,尾部が後方であり,背腹軸は,口が開いている方が腹側,その反対側が背側である。さらに左右軸が加わることで,中心周辺軸が形成される。

※2 RSPO2

R-スポンジン2。ある種の細胞から分泌され,細胞表面に存在するロイシンリッチリピートを持つGタンパク質共役型受容体と結合することで,細胞の分化および形態形成過程を調節するWNT-β-カテニン シグナル経路を活性化する。大腸がんを含むさまざまながんで,RSPO2の遺伝子変異が見られる。

※3 WNT

初期発生における体軸の決定や原腸陥入,器官形成を制御する種を超えて保存されている細胞外分泌タンパク質。WNTが細胞表面の受容体に結合すると,細胞内でWNT-β-カテニン シグナル経路が活性化し,さまざまな遺伝子の発現誘導が引き起こされる。さまざまながんでWNT-β-カテニン シグナル経路の構成因子の遺伝子異常が見いだされている。

※4 ロイシンリッチリピートを持つGタンパク質共役型受容体(LGR)

細胞膜を7回貫通する特徴的な構造を持つタンパク質。細胞外の因子を受け取り,そのシグナルを細胞内に伝える役割を持つ。

 

 

詳しくはこちら [PDF]

Nature

 

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