自閉症における抗肥満メカニズムを解明
-肥満症の新たな治療法開発に期待-

金沢大学医薬保健研究域医学系の西山正章教授,九州大学生体防御医学研究所の中山敬一主幹教授,名古屋市立大学薬学研究科の喜多泰之助教・白根道子教授らの研究グループは,自閉症の原因たんぱく質であるCHD8(※1)が,脂肪分化や脂肪細胞における脂肪滴の蓄積に非常に重要な役割を持つことを発見しました。

CHD8は,自閉症患者において最も変異率の高い遺伝子です。CHD8遺伝子に変異を持つ自閉症では,コミュニケーション異常や固執傾向といった自閉症特有の症状の他に,痩せ型の人が多いという特徴が報告されています。このことから,CHD8たんぱく質が神経発生だけではなく,代謝機能や脂肪分化にも重要な機能を有していることが示唆されてきましたが,その具体的なメカニズムは謎のままでした。

今回,本研究グループは,脂肪幹細胞(※2)特異的にCHD8遺伝子を欠損させたマウスを新たに作成し,このマウスでは脂肪分化や脂肪滴の蓄積が抑制されていることを発見しました。また,脂肪細胞におけるCHD8の機能をトランスオミクス解析(※3)という新技術によって調べたところ,CHD8はC/EBPβ(※4)という脂肪細胞分化に重要なたんぱく質と協調して,脂肪分化や脂肪滴の蓄積に関わる脂肪関連遺伝子の発現を調節していることが分かりました。さらに,マウスのCHD8遺伝子を人工的に欠損させると,高脂肪餌を食べても太りにくくなることが分かりました。

これらの結果は,脂肪組織において特異的にCHD8を抑制することにより,肥満を治療できる可能性を示すものであり,肥満症の新たな治療法開発が期待されます。

本研究成果は,2018年5月15日午前11時(米国東部時間)に米国科学雑誌「Cell Reports」に掲載されました。

図 CHD8が脂肪分化を調節するしくみ

 

 

【用語解説】

※1 CHD8
染色体構造を変化させる作用を持つクロマチンリモデリング因子という一群のたんぱく質の一種で,遺伝子の発現量を調節する働きがある。

※2 脂肪幹細胞
脂肪組織内に存在する組織幹細胞の一種です。脂肪,骨,軟骨,神経などへ分化する能力を持つ。

※3 トランスオミクス解析
遺伝子,遺伝子を調節する化学修飾,遺伝子から作られる転写物等を全て測定することによって,体内にどのような変化が起こっているかを総合的に調べる新技術。

※4 C/EBPβ
脂肪関連遺伝子の転写調節領域に結合することによって、その転写を制御し、脂肪分化を促進するたんぱく質の一種。

 

 

詳しくはこちら [PDF]

Cell Reports

研究者情報:西山 正章

 

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