メタボから幹細胞を守るしくみを発見!

金沢大学がん進展制御研究所/ナノ生命科学研究所(WPI-NanoLSI)の田所優子助教,平尾敦教授らの研究グループは,スタンフォード大学,中国医学科学院,東京大学,京都大学,大阪大学,慶應義塾大学,九州大学,がん研究会がん研究所との共同研究により,造血幹細胞(※1)には,極端に偏った食事により引き起こされる傷害やがん化を防ぐ仕組みが備わっていることを世界に先駆けて発見しました。

極端に偏った食生活,特に脂肪分の多い食事は,生活習慣病,いわゆるメタボリックシンドロームを引き起こすのみならず,がんの誘因になることが知られています。しかし,このような極端に偏った食事が原因となるストレスが,造血幹細胞にどのような影響を与えているのかは,これまで明らかにはされていませんでした。

今回,本研究グループは,マウスを用いた実験により,Spred1(※2)という分子が,造血幹細胞において高脂肪食摂取によるERKシグナル(※3)の活性化を抑制し,血液のがんである白血病の発症を防いでいることを発見しました。さらに,Spred1が失われた場合,高脂肪食摂取によって発症する白血病は,腸内細菌叢(※4)の変化を介していることも見いだしました(図)。

これらの知見は,ヒトの白血病の発症に,食生活の変化に伴う腸内細菌叢の異常が関与している可能性を示すものであり,将来,白血病の予防や治療法の向上につながるものと期待されます。

本研究成果は,2018年4月26日正午(米国東海岸標準時間)に米国科学誌「Cell Stem Cell」のオンライン版に掲載されました。
 

高脂肪食を与えたマウスでは,腸内細菌叢のバランスが変化してしまいます。野生型造血幹細胞ではSpred1が存在することで,マウスは肥満になりますが,血液は正常です。一方,Spred1を欠損すると,細胞の接着や運動を制御するROCKシグナルの活性化に加えてERKシグナルの抑制が外れ,造血幹細胞は異常な自己複製を起こすようになります。その結果,Spred1欠損造血幹細胞は正常状態を保てずに,幹細胞機能を失い,重度の貧血を起こし,白血病を発症します。

 

【用語解説】

※1 造血幹細胞
全ての血液細胞を一生涯にわたって供給している細胞。造血幹細胞自身が失われないように,自分自身も複製することができる能力「自己複製能」を持っている。

※2 Spred1
ヒトにおけるレジウス症候群の原因遺伝子。さまざまな細胞間相互作用を媒介するタンパク質であるサイトカインの刺激を細胞内で抑制する働きを持っている。

※3 ERKシグナル
細胞の増殖などを活性化し,多くのがんでERKシグナルの活性化がみられる。ERKシグナルの制御異常が,がん化の一因となっていると一般的に考えられている。

※4 腸内細菌叢
我々は産まれてくると同時に多くの細菌が腸内に住み着くようになる。このような腸内に住み着いた細菌集団を“腸内細菌叢”という。最近の研究で,腸内細菌叢の変化が我々の健康状態に影響を与え,さまざまな病気に関わっていることが明らかとなってきている。
 

 

 

詳しくはこちら [PDF]

Cell Stem Cell

研究者情報:平尾 敦

研究者情報:田所 優子

 

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