北陸の心房細動患者を対象とした調査研究で 血中BNP値が高いほど脳梗塞の発症リスクが高まることを発見

掲載日:2018-3-15
研究

金沢大学医薬保健研究域医学系循環器病態内科学の山岸正和教授,川尻剛照准教授,附属病院循環器内科の津田豊暢助教,附属病院検査部の林研至助教らの研究グループは,北陸の心房細動患者を対象とした調査研究を通して,血中のBNP(※)値が高いと脳梗塞の発症リスクが高まることを見いだしました。

心房細動は,脈拍がバラバラになる不整脈の一種で,放っておくと脳梗塞や心不全,認知症などを引き起こす可能性があります。また,心房細動は高齢者に多くみられ,現在わが国には140~150万人の患者がいるとされ,70歳代の6%が心房細動であるという報告もあります。心房細動で脳梗塞を発症すると半分以上の患者が死亡,寝たきり,要介護となるため,その発症予防が極めて重要です。

本研究グループは,2013年から北陸の心房細動患者の年齢,生活習慣,持病,治療状況を登録し,1年ごとに脳梗塞や出血などのイベント発症状況や治療の変化などを追跡しています。今回,追跡開始2年目のデータにより,登録時のBNP値が170 pg/ml 以上の患者では脳梗塞を含む血栓塞栓症の発症率が高いことを突き止めました(図)。この発見は,心房細動の重症度を評価する際の新しい目安となり,心房細動における脳梗塞の発症を予測し,予防するための指標となるなど,わが国における心房細動診断・治療のガイドラインにも加わる可能性があります。

本研究成果は,日本時間2018年2月28日午前1時に,日本循環器学会学術誌「Circulation Journal」のオンライン版に掲載されました。
 

図 血栓塞栓症の累積発症率

BNP値170 pg/ml を基準とすると,1年間に,基準値以上の患者の3.2%が血栓塞栓症を発症し,一方基準値未満の患者の0.7%が血栓塞栓症を発症した。また,図のように基準値以上の患者の血栓塞栓症の累積発症率は,基準値未満の患者のそれに比べて有意に大きかった。

 

【用語解説】
※ BNP
心臓の機能が低下して心臓への負担が大きいほど数値が高くなるホルモンで,18.4 pg/ml 以下が正常値とされる。血液検査で簡単に測定することができる。

 

詳しくはこちら [PDF]

Circulation Journal

研究者情報:山岸 正和

研究者情報:川尻 剛照

研究者情報:津田 豊暢

研究者情報:林 研至

 

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