ステンレスや銅などの金属について,腐食反応のナノスケール分布を観察することに成功

理工研究域電子情報学系の福間剛士教授らの研究グループは,独自に開発したオープンループ電位顕微鏡(OL-EPM)と呼ばれる液中電位分布計測技術を用いることで,ステンレス鋼や銅微細配線の腐食挙動に伴う局部電池(※)の分布の変化をナノスケールの分解能で観察することに世界で初めて成功しました。

金属の腐食は,ステンレス鋼が使われる原子力発電所や,銅微細配線が使われる半導体デバイスなど,数多くの産業分野に係る深刻な問題とされ,日本における腐食による経済損失は,年間15~20兆円とも言われています。
 金属の腐食は,局部電池が形成されるために進行すると考えられていますが,これまでの計測技術では,腐食反応中に形成される局部電池の分布を観察することができず,表面構造や,腐食前後の構造・組成変化観察によって分析されてきました。しかし,腐食反応の多くは表面下で進行し,その影響がある程度蓄積された段階で初めて最表面の構造変化が起こるため,腐食反応が生じている場所を正確に知ることはできませんでした。
 今回,OL-EPMにより,これまで観察できなかった腐食反応の分布を,ナノスケールの分解能で可視化し,さらに,その経時変化をリアルタイムで観察することにも成功しました。金属の最表面に腐食の影響が表れていない段階で腐食反応が生じている(もしくは生じやすい)場所が特定できることとなり,例えば,腐食が表面上に表れるまでに時間がかかるステンレス鋼などの高耐食性材料について,その評価に要するコストと時間を大幅に減らすことができます。また,金属腐食の微視的な理解や予測・防止法の開発にも大きな発展をもたらし,今後の新たな材料開発時にも大いに役立つことが期待されます。
 さらに,この観察技術は,腐食反応だけではなく,触媒反応や電池電極反応などの分析にも役立つものと予想され,今後のOL-EPMを用いた広範な電気化学現象に関する研究のさきがけとなることも期待されます。

本研究成果は,2月1日にアメリカ化学会誌「ACS Nano」のオンライン版に掲載され,今後発行される同誌冊子体にも掲載される予定です。

なお,本研究は,国立研究開発法人科学技術振興機構のACT-Cプロジェクトの支援と株式会社日立製作所,株式会社荏原製作所との共同研究により進められました。

 

(※)局部電池 金属と水が接する界面において,金属が酸化される場所(アノード)と,それによって生成される電子が消費される還元反応が生じる場所(カソード)との組。金属の腐食は一般に,この組が形成されるために進行するとされる。

 

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