世界で初めて非直鎖状マグネトソームを有する新奇淡水性磁性球菌FCR-1株の分離・培養に成功

掲載日:2025-6-25
研究

 金沢大学理工研究域生命理工学系の田岡東教授は、自然科学研究科生命理工学専攻修士課程の福井深月(研究当時)、白川拓輝、東洋大学バイオ・ナノエレクトロニクス研究センターの下重裕一研究助手、海洋研究開発機構の宮崎征行准研究副主任などの研究グループと共同で、淡水性磁性球菌(※1)の培養に世界で初めて成功しました。これまで、淡水性磁性球菌は、主に淡水環境の堆積物中から最も多く検出または観察される培養困難な磁性細菌として知られていました。本研究成果は、地球上のさまざまな水環境中に生息分布する磁性細菌だけにとどまらず、地磁気を感知する全ての生物の進化を解明するための一助となり得ます。また、マグネトソーム(※2)による地磁気感知の新たなメカニズムの発見が期待できます。

 淡水性磁性球菌は、約40年以上前に発見されたにもかかわらず、培養が非常に困難であったため、これまで培養成功例は皆無でした。本研究では、東京都小笠原村父島の島内にある連珠ダムの堆積物より、非直鎖状マグネトソームを有する新奇淡水性磁性球菌FCR-1株を見出し、世界で初めて培養に成功しました。また、非直鎖状マグネトソームを有する磁性細菌の培養も本研究が世界初となりました。

 本研究において、田岡教授らは、FCR-1株の培養法の検討および細胞の遊泳解析に貢献しました。

 本研究成果は、2025年3月27日に国際学術雑誌『Communications Biology』に掲載されました。

 

図1:直鎖状マグネトソームを有する磁性球菌

  

図2: 非直鎖状マグネトソームを有する淡水性磁性球菌FCR-1株 

 

 

【用語解説】

※1:磁性球菌
 球状の磁性細菌。磁性細菌とは、酸化鉄または硫化鉄で構成されたナノメートル(nm)サイズ(nmは10-9m)の磁性体(磁性ナノ粒⼦)を合成する細菌。

※2:マグネトソーム
 直鎖状または⾮直鎖状のリン脂質⼆重膜で覆われた磁性ナノ粒⼦からなる細胞内⼩器官のこと。

 

 

プレスリリースはこちら

ジャーナル名:Communications Biology

研究者情報:田岡 東

 

 

 

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