記憶の形成・忘却を司るタンパク質の“はたらく姿”をナノスケールで撮影!

掲載日:2023-7-11
研究

 金沢大学ナノ生命科学研究所/新学術創成研究機構の柴田幹大教授,自然科学研究機構生理学研究所の村越秀治准教授の共同研究グループは,脳内の記憶形成や忘却に関わる酵素 “カルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼII(CaMKII)”の入力依存的な構造変化(活性化)を,高速原子間力顕微鏡(高速AFM)(※1)を用いて,ナノメートルスケールで可視化することに成功しました。種依存的なCaMKII構造の違いや薬剤に対する応答メカニズムは,将来,記憶や学習,認知といった脳機能を分子レベルで理解することにつながり,アルツハイマー病をはじめとするさまざまな精神・神経疾患の臨床応用(治療薬)に繋がることが期待されます。

 本研究成果は,2023年6月30日14時(米国東部時間)に国際科学誌『Science Advances』オンライン版に掲載されました。

 

本研究のポイント

  • 脳の神経細胞に豊富に存在し,記憶形成や忘却を担うタンパク質(CaMKII)のはたらく姿をナノスケールで詳細に明らかにした。
  • ヒドラや線虫のCaMKIIと比較して,ラット由来のCaMKIIだけが自己リン酸化による触媒ドメイン集合体を形成することが分かった。
  • ヒドラや線虫のCaMKIIと比較して,ラット由来の CaMKIIは脱リン酸化酵素により強い耐性を持っていることが分かった。

 

 

 

図:ラット由来のCaMKIIαの連続する高速AFM画像
 中央にハブ集合体が存在し,その周囲をキナーゼドメインが自由に動く様子が観察された。右の画像は,各キナーゼドメインの軌跡を示す。原著論文では動画を見ることができる。 

 

 

 

【用語解説】

※1:高速原子間力顕微鏡(高速AFM)
 柔らかい板バネの先に付いた針の先端で試料に触れ,試料の表面形状を可視化する顕微鏡。針と試料の水平方向の相対位置を変えながら試料表面の高さを計測する。試料の表面を高速(最速33フレーム/秒)にスキャンすることにより試料の動きを可視化することができ,生物学や材料科学などの幅広い分野で利用されている。

 

 

 

プレスリリースはこちら

ジャーナル名:Science Advances

研究者情報:柴田 幹大

 

 

 

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